無地の木の板に文字を入れたい、トートバッグにワンポイントの模様をのせたい。そう思ってステンシルを調べると、シートを置いて色を塗るだけの簡単な作業に見えます。ところが実際に手を動かすと、輪郭がにじんで線がぼやけたり、シートをはがすときに塗った色まで一緒に持っていかれたりと、思いどおりの線が出ないことがあります。
先に結論を言うと、ステンシルの仕上がりを左右するのは塗る瞬間よりも、その前後の準備です。シートが浮かないように固定する、スポンジに含ませる絵の具を少なくして薄く重ねる、塗る前の素材は汚れを落として研磨しておく、塗ったあとは使う塗料のメーカーが示す時間だけ乾かす。この流れを押さえておくと、にじみや色むらの原因を作業前につぶしやすくなります。
この記事では、古賀市教育委員会の子ども向けアート教室の資料、カンペハピオと和信ペイントの公式の塗装手順、消費者庁のスプレー缶に関する注意喚起といった一次情報をもとに、道具と絵の具の選び方、型紙(シート)の自作、塗り方、乾燥、スプレーを使うときの注意までを、なぜそうするのかという理屈から順に解説します。
・ステンシルの仕組みと、布・木・紙で絵の具を選び分ける理由
・丸い図柄でも抜け落ちない、つなぎを残したシートの作り方
・スポンジで薄くたたいて重ねる塗り方と、にじみが起きる原因
・メーカー公式の乾燥時間の読み方と、スプレーを使うときの注意
型の穴から色を置く仕組み|にじむかどうかは密着で決まる

穴のあいた部分にだけ色がのる、という単純な仕組み
ステンシルは、図柄の形に穴をあけたシートを素材の上に置き、その穴の部分にだけ色をのせる技法です。穴以外の部分はシートが色をさえぎるので、シートを取ると図柄の形だけが残ります。筆で輪郭をなぞる必要がないため、絵が得意でなくても形のそろった模様を入れられるのが持ち味です。
この仕組みから分かるのは、輪郭がきれいに出るかどうかは、シートの縁と素材の表面がどれだけぴったり接しているかで決まるということです。シートと素材のあいだにすき間があると、穴から入った絵の具がシートの裏側へ回り込み、輪郭の外側に色がはみ出します。これがにじみの正体です。
よくあるのは、シートを図柄の中央だけテープで留めて、四隅や穴の縁が浮いたまま塗り始めてしまうケースです。最初の数回は問題なく見えても、スポンジで押すたびにシートがわずかに動き、縁の下へ絵の具が入り込んでいきます。
塗り始める前に、図柄の縁を指先でなぞって浮いている場所がないかを確かめる習慣をつけておくと、仕上がりが安定します。シートの固定の具体的なやり方は、後半の塗り方の見出しで詳しく説明します。
手描きより輪郭がそろうのは、線を型が決めてくれるから
ステンシルで模様の形がそろうのは、線の位置を人の手ではなく型が決めているからです。同じシートを使えば、何度塗っても同じ形が出ます。文字や記号を複数の板や布に同じ大きさで入れたいときに、手描きよりも向いている理由はここにあります。
逆に言えば、型の精度がそのまま仕上がりの精度になります。シートを切るときに刃がぶれて縁がギザギザになっていれば、そのギザギザも素材に写ります。図柄の角が丸く切れていれば、塗った模様の角も丸くなります。塗り方をいくら工夫しても、型にない形は出せません。
ありがちなのは、塗る工程ばかりに気をつけて、シートを切る工程を急いでしまうことです。シートの切り口が毛羽立っていたり、切り残しの細い繊維がぶら下がっていたりすると、そこに絵の具がたまって輪郭が乱れます。
シートを切り終えたら、塗る前に一度光にかざして、切り口がなめらかか、切り残しがないかを確認しましょう。手間に見えますが、この確認が仕上がりの差になります。シートの作り方は、このあとの型紙の見出しでまとめて解説します。
木・布・紙で何が変わる?素材が絵の具を吸うかどうか
同じシートと同じ塗り方でも、塗る素材によって結果は変わります。大きな違いは、素材が絵の具の水分を吸い込むかどうかです。紙や布、無塗装の木は水分を吸いやすく、表面がつるつるした素材は吸い込みがほとんどありません。
吸い込みの多い素材では、絵の具の水分が繊維に沿って広がりやすく、輪郭の外側へ色がしみ出すことがあります。一方、吸い込みのない素材では、絵の具が表面にとどまるので広がりにくい反面、乾くまで時間がかかったり、しっかり定着しなかったりすることがあります。塗料メーカーの製品情報でも、カンペハピオの水性ステイン+は、吸い込みのない素材を塗装に適さない素材として挙げています。
失敗しやすいのは、紙で試してうまくいった絵の具の量を、そのまま布に当てはめてしまうことです。布は織り目に沿って水分が広がるため、紙と同じ量でもにじむことがあります。
素材を変えるときは、本番と同じ素材の端切れや端材で一度試し塗りをしてから始めるのが確実です。素材ごとの絵の具の選び方は、次の見出しで比較表にして整理します。
ステンシルシート:図柄の形に穴をあけた型。市販品のほか、シートに図案を写して自分で切り抜いて作ることもできます。
つなぎ:丸や輪の形を切り抜くとき、内側の部分が抜け落ちないように、あえて切らずに残しておく細い部分。
ウエス:拭き取りに使う布のこと。塗装前の汚れ落としや、はみ出した塗料の拭き取りに使います。
道具と材料は何をそろえる?素材に合わせた絵の具の選び方
シート・テープ・スポンジ・刃物とマット。基本の道具一式
ステンシルに必要な道具は、特別なものではありません。古賀市教育委員会の子ども向けアート教室の資料では、共通で使う物として、ステンシルシート、荷造り用テープ(OPPテープ)もしくは養生テープ、スポンジ、はさみ、カッター、カッターマットが挙げられています。これに、塗る素材と絵の具を加えれば作業を始められます。
それぞれに役割があります。シートは型、テープはシートの補強と固定、スポンジは色をのせる道具、はさみとカッターは型を切る刃物、カッターマットは机を傷つけずに刃をまっすぐ進めるための下敷きです。どれかを省くと、その役割を別の何かで代わりにしなければならず、仕上がりが不安定になります。
ありがちなのは、カッターマットを使わずに雑誌や段ボールの上でシートを切ってしまうことです。下が柔らかいと刃が沈み込み、切り口がよれたり、余計なところまで切れたりします。型の精度がそのまま仕上がりになるステンシルでは、この小さなよれが目立ちます。
道具をそろえるときは、作業台の上に新聞紙やビニールシートを敷いて、汚れてもよい状態を先に作っておきましょう。和信ペイントの塗装手順でも、塗装の用意として新聞紙やビニールシート、ゴーグル・マスク・軍手やビニール手袋、汚れてもよい服装が挙げられています。
布や木はアクリル絵の具と木工用ボンドを1対1で混ぜる例も
布や木に塗る場合の一例として、古賀市教育委員会の子ども向け教室資料では、アクリル絵の具と木工用ボンドを1対1で混ぜて使う方法が紹介されています。家にある材料で始められる配合で、子どもと一緒に取り組む場合の目安になります。
布や木は、紙と違って水分を吸い込みながらも、表面に凹凸や繊維があります。水っぽい絵の具だと繊維に沿って広がりやすいので、ある程度の粘りがある色材のほうが扱いやすくなります。資料の配合はこの点を踏まえた使い方の一例と考えられます。なお、資料に載っているのはこの配合だけで、ほかの比率については記載がありません。
やりがちなのは、粘りを出そうとしてボンドを多めに入れたり、逆に絵の具を水でゆるめたりして、配合を自己流に変えてしまうことです。資料にない比率に変えた場合の仕上がりは、ここでは確認できていません。
まずは資料どおり1対1で混ぜ、端材や端切れで試し塗りをしてから本番に移るのが安全です。色を混ぜて作る場合は、必要な量を一度に作っておくと、途中で色が変わるのを防げます。
紙には水彩絵の具だけ、という使い分けの理由
同じ資料では、紙に塗るときは水彩絵の具だけを使う、と素材によって色材を分けています。布や木と紙とで、使う絵の具をはっきり変えているのがポイントです。
紙は布や木に比べて薄く、水分を含むと波打ったり、こすれて毛羽立ったりしやすい素材です。紙に向けた画材である水彩絵の具を使えば、紙の上で扱いやすく、作業後の片付けもしやすくなります。布や木向けの配合をそのまま紙に使う必要はありません。
よくある失敗は、紙に塗るときにも水を多く含ませてしまうことです。紙が水分を吸って波打つと、シートとのあいだにすき間ができ、そこから色が回り込んで輪郭がにじみます。紙が波打つほど濡らすと、乾いたあとも平らに戻りにくくなります。
紙に塗るときも、スポンジに含ませる絵の具は少なめにして、軽く押し当てる程度にとどめましょう。色が薄いと感じたら、一度に濃く塗るのではなく、乾かしてから重ねるほうが紙を傷めにくくなります。
| 項目 | 布・木(工作として) | 紙 | 家具・小物を塗料で |
|---|---|---|---|
| 色材 | アクリル絵の具と木工用ボンドを1対1で混ぜる | 水彩絵の具だけ | 対象素材に木部などを挙げた水性塗料(例:カンペハピオ マットペイント) |
| 根拠 | 古賀市教育委員会の子ども向け教室資料 | 同資料 | カンペハピオ公式の製品情報 |
| 注意点 | 資料にあるのはこの配合のみ。比率を自己流に変えない | 水を含ませすぎると紙が波打ち、すき間からにじむ | 粘度が高く塗りにくい時は5%以内の水でうすめる(製品の案内) |
パレットは牛乳パックやクリアファイルで代用できる
絵の具を出して混ぜるパレットは、専用品を買わなくてもかまいません。古賀市教育委員会の資料では、牛乳パックや不要なクリアファイルをパレットの代わりに使えると紹介されています。
ステンシルでは、スポンジに絵の具を含ませたあと、余分な絵の具を落とす作業が欠かせません。表面が平らで、絵の具が染み込まない牛乳パックの内側やクリアファイルは、この余分を落とす台としても使えます。使い終わったら処分できるので、ボンドを混ぜた絵の具のように洗いにくいものを扱うときにも便利です。
ありがちなのは、絵の具を出す場所と余分を落とす場所を分けずに、同じところで両方をやってしまうことです。余分を落としたつもりでも、出したばかりの絵の具をまたスポンジが拾ってしまい、含ませる量が減りません。
パレットの上で、絵の具を出す場所と、スポンジを軽く押し当てて余分を落とす場所を分けておきましょう。塗料を缶で用意する場合は、缶の開け閉めにもコツがあります。ふたを無理にこじると変形して閉まらなくなることがあるので、下の記事も参考にしてください。

型紙(シート)の作り方|丸い図柄はつなぎを残して切る

図案を印刷して、シートの両面をテープで覆う理由
市販のステンシルシートに好みの図柄がないときは、自分で型を作れます。古賀市教育委員会の資料では、図案を印刷し、シートの両面にOPPテープか養生テープを貼り、カッターやハサミで図柄を切り取る、という流れで紹介されています。資料では、テープについて「荷造り用テープ(OPP テープ)もしくは養生テープ」と書かれています。
シートの両面をテープで覆うのは、型の表面をなめらかにして、絵の具が染み込みにくくするためと考えられます。紙や薄いシートのままだと、塗るたびに水分を吸って柔らかくなり、縁がよれたり破れたりしやすくなります。テープで覆っておけば、何度か塗っても型の形を保ちやすくなります。
やりがちな失敗は、テープを貼るときに気泡やしわを残してしまうことです。テープの下に空気が入ったまま図柄を切ると、切り口の部分でテープが浮き、そこから絵の具が入り込みます。しわが寄った部分は表面が平らにならないので、素材との密着も悪くなります。
テープは端から少しずつ貼り、指やヘラで空気を押し出しながら伸ばしましょう。テープを並べて貼る場合は、少し重ねて貼るとすき間ができにくくなります。
丸い図柄の内側が抜け落ちる失敗は、つなぎで防ぐ
自作のシートで起きやすい失敗が、丸や輪の形を切ったら内側が抜け落ちてしまうことです。古賀市教育委員会の資料でも、丸などの図柄を切るときは、切り抜かない部分(つなぎ)をつくっておくよう注意されています。
原因はシンプルです。輪の形を線のとおりに一周切ると、内側の部分はシートのどこともつながっていない、ただの切れ端になります。ステンシルは穴の部分に色がのる仕組みなので、内側が抜け落ちたシートで塗ると、本来は白く残るはずの輪の内側まで塗りつぶされ、輪ではなく塗りつぶした丸になってしまいます。数字の0や6、アルファベットのOやAなど、文字の図案でも同じことが起きます。
対策は、切り始める前に、内側の部分と外側のシートをつなぐ細い橋のような部分を図案に描き足しておくことです。この部分だけ切らずに残せば、内側がシートとつながったまま固定されます。塗り上がりにはつなぎの分だけ線が途切れますが、これはステンシルらしい見た目として受け入れられることが多い部分です。
状況:丸や文字の0・A・Oを線のとおりに一周切ったら、内側の部分が外れてしまった。
原因:内側がシートのどこともつながっていない状態で切り抜いたため。
対策:切る前に、内側と外側をつなぐ切らない部分(つなぎ)を描き足し、そこだけ残して切る。
カッターとハサミの使い分けと、刃物を使うときの約束
図柄を切る道具は、形によって使い分けるのが効率的です。外側の大きな輪郭や直線はハサミで、図柄の内側の細かい部分や、シートの途中から切り始める部分はカッターで切ると、どちらも無理なく進められます。古賀市教育委員会の資料でも、カッターやハサミで図柄を切り取ると、両方を使う前提で書かれています。
カッターは、刃を一気に深く入れるよりも、軽い力で何度か刃を通して切るほうが線がぶれにくくなります。強く押しつけると刃が逃げて、思わぬ方向に切れてしまうことがあるからです。曲線を切るときは、刃を動かすよりもシートのほうを少しずつ回していくと、なめらかな線になりやすくなります。
ありがちなのは、切れ味の落ちた刃のまま無理に切り進めることです。刃が引っかかって切り口がギザギザになったり、テープがめくれたりして、型の精度が落ちます。
そして安全面です。古賀市教育委員会の資料は子ども向けのため、カッターは家の大人の人と一緒に使うよう注意しています。子どもと一緒に作業する場合は、カッターの作業は大人が担当するか、必ずそばについて見守るようにしましょう。刃を出しすぎず、使わないときは刃をしまう習慣も大切です。
木に塗る前の下地づくり|脱脂と♯240〜♯320の研磨が効く理由
油分やワックスが残ると、絵の具がはじかれやすい
木にステンシルをする場合、塗る前の下地づくりが仕上がりを左右します。ステンシル専用の公式手順は見つかりませんでしたが、木部に塗料を塗るときの基本は同じです。カンペハピオのニスの塗装方法では、塗る前の汚れ落としについて「ゴミ、油分、カビ、ワックスなどは中性洗剤で丁寧に落とし、布(ウエス)で充分に拭き取ります」と案内しています。
表面に油分やワックスが残っていると、水性の絵の具や塗料がはじかれて、色が均一にのりません。また、塗料と木のあいだに汚れの層がはさまる形になるため、乾いたあとに塗膜がはがれやすくなります。ステンシルの場合はさらに、汚れの上ではシートを留めるテープも貼りつきにくくなり、シートの浮きにつながります。
失敗しやすいのは、手で何度もさわった中古の家具や、ワックスで手入れしてきた木の小物に、そのまま塗ってしまうケースです。見た目にはきれいでも、手の脂やワックスが薄く残っていることがあります。
中性洗剤で汚れを落としたら、ウエスで洗剤分まで拭き取り、木がしっかり乾いてから次の研磨に進みましょう。濡れたまま研磨や塗装に進むと、水分が残った部分だけ色の入り方が変わることがあります。
サンドペーパーは木目に沿って♯240〜♯320
汚れを落としたら、表面を研磨して滑らかにします。カンペハピオのニスの塗装方法では「サンドペーパー(♯240〜♯320)で、木目に沿って研磨し、表面を滑らかにします」と案内しています。和信ペイントのステイン塗装手順でも、素地調整として240番の空研ぎサンドペーパーで木目に沿って研磨する手順が示されています。
ステンシルで研磨が効いてくるのは、シートとの密着です。表面にささくれや凹凸が残っていると、シートを置いても凸の部分にしか接せず、凹の部分にすき間ができます。そのすき間から絵の具が回り込むと、輪郭がにじみます。表面を平らに整えておくほど、シートの縁がぴったり接しやすくなります。
ありがちなのは、早く平らにしようとして木目を横切る方向にこすってしまうことです。木目に逆らって研ぐと、繊維を断ち切る細かい傷がつき、塗ったときにその傷に色がたまって目立つことがあります。
研磨が終わったら、出た粉をウエスで拭き取ってから塗装に進みましょう。粉が残ったままシートを置くと、粉の上にシートが乗って浮きの原因になります。研磨前の素材選びに迷う場合は、木の種類による硬さや性質の違いも知っておくと判断しやすくなります。

木の下地づくりは、汚れ落とし→乾燥→研磨→粉の拭き取りの順番です。カンペハピオ公式では中性洗剤での汚れ落としと、サンドペーパー♯240〜♯320で木目に沿った研磨が案内されています。表面が平らになるほどシートが密着し、にじみにくくなります。
プリント合板など吸い込みのない面は、塗料の対象素材を確認
木に見える素材でも、塗料によっては塗装に向かないものがあります。カンペハピオの水性ステイン+の製品情報では、塗装に適さない素材として「高級家具、吸い込みのない素材(プリント合板・デコラ板など)」が挙げられています。
ステインのように木に染み込んで色をつけるタイプの塗料は、木が塗料を吸い込むことを前提にしています。表面に木目の柄を印刷したプリント合板や、樹脂の化粧板は、表面が塗料を吸い込まないので、染み込むタイプの塗料では色が定着しにくくなります。見た目が木でも、表面の材質は別物です。
失敗しやすいのは、カラーボックスや組み立て家具など、木目柄のシートが貼られた家具にステンシルをするケースです。研磨しても下の印刷がはがれるだけで、塗料の吸い込みは改善しません。
家具にステンシルをする前は、塗る面が無垢の木か、印刷や化粧板かを確認し、使う塗料の缶や公式の製品情報で対象素材に含まれているかを確かめましょう。カンペハピオのマットペイントのように、対象素材にプラスチック製品などを挙げている塗料もあるので、素材に合わせて塗料を選ぶのが基本です。
雨の日・湿った曇りの日・寒い日は作業を避ける
塗る日の天気も仕上がりに影響します。和信ペイントのステイン塗装手順では、塗料が乾きにくい環境として「雨天や、湿度の高い曇天、極端に気温が低い日」を挙げています。
水性の絵の具や塗料は、含まれる水分が空気中へ逃げていくことで乾きます。湿度が高いと空気がすでに水分を多く含んでいるため、塗料の水分が逃げにくく、乾燥に時間がかかります。気温が低いときも乾きは遅くなります。後で紹介するカンペハピオ公式の乾燥時間でも、冬期は20℃のときより時間が長く示されています。
ステンシルで乾燥が遅れると困るのは、シートをはがすときや、色を重ねるときです。乾ききっていない状態で次の作業に進むと、塗った色がシートに持っていかれたり、重ねた色と混ざってにごったりします。
作業日を選べる場合は、晴れて空気の乾いた日を選びましょう。室内で作業する場合も、換気をしながら、極端に寒い場所は避けるのが無難です。
ステンシルのやり方は5ステップ|スポンジで薄くたたいて重ねる
シートの固定は、塗る範囲の縁が浮かないことが条件
塗り始める前のシートの固定が、ステンシルでいちばん手を抜きたくなる工程で、いちばん差が出る工程でもあります。条件はひとつで、図柄の穴の縁が素材にぴったり接していて、塗っているあいだに動かないことです。
固定にはマスキングテープや養生テープを使います。和信ペイントのステイン塗装手順でも、用意する物にマスキングテープが含まれています。シートの四辺をテープで素材に留め、さらに図柄の近くで浮きやすい部分があれば、そこも追加で押さえます。四辺だけ留めても、シートの中央がたわんでいれば図柄の縁は浮いたままです。
ありがちなのは、テープを短く切ってシートの角だけを点で留めることです。スポンジで押すたびにシートがわずかに持ち上がったり、横にずれたりして、輪郭が二重になったりにじんだりします。
テープで留めたら、図柄の縁を指の腹でなぞり、浮いている場所がないか確かめてから塗り始めましょう。素材の表面にほこりがあるとテープが貼りつかないので、研磨後の粉はしっかり拭き取っておきます。
絵の具は含ませてから余分を落とす。実はふつうの木部塗装と同じ考え方
スポンジに含ませる絵の具は、思っているよりずっと少なくてかまいません。スポンジに絵の具をつけたら、すぐに素材へ向かわず、パレットの空いた場所に何度か押し当てて余分を落としてから塗ります。
実は、ステンシルは図工というより、塗装の一種として考えると理屈が通ります。カンペハピオのニスの塗装方法では、塗り方について「木目にそって薄く数回に分けて塗りましょう。一回塗るごとに充分乾燥させます」と案内しています。これはニスの手順ですが、一度に厚く塗らずに薄く重ねるという考え方は、ステンシルでも同じように役立ちます。絵の具が多いと、余った分がシートの縁の下へ流れ込み、にじみの原因になるからです。
ありがちなのは、一回で濃い色を出そうとして、スポンジにたっぷり絵の具を含ませてしまうことです。最初のひと押しで穴の縁から絵の具がはみ出し、シートの裏側に回り込みます。
色が薄いと感じたら、絵の具を足すのではなく、薄い層を何度か重ねて濃くしていきましょう。一度に仕上げようとしないことが、輪郭をくっきり出す近道です。
なでずに真上から押し当てる理由
スポンジの動かし方は、なでるのではなく、真上から軽くたたくように押し当てるのが基本です。筆で塗るように左右へ動かすと、それだけで輪郭が乱れやすくなります。
理由は、力の向きにあります。スポンジを横に動かすと、絵の具は動かした方向へ押し出されます。穴の縁に向かって横向きの力がかかると、絵の具がシートの縁の下へ押し込まれ、素材とシートのあいだに入り込みます。真上から押し当てる場合は、力が素材に対して垂直にかかるので、絵の具が横へ逃げにくく、穴の中にとどまりやすくなります。シート自体も横にずれにくくなります。
失敗しやすいのは、図柄の縁を塗るときです。縁をしっかり塗ろうとして、スポンジを縁に沿ってこするように動かしてしまうと、その部分だけにじみが出ます。
縁の部分ほど、スポンジを真上から軽く当てることを意識しましょう。縁から内側へ向かって順に色をのせていくと、縁に絵の具がたまりすぎるのを防ぎやすくなります。広い面を塗るときも、押し当てては持ち上げる動作を繰り返します。
輪郭がにじむ失敗は、絵の具の量とシートの浮きで起きる
はがしてみたら輪郭がにじんでいた、という失敗の原因は、多くの場合、ここまで説明してきた二つに分けられます。絵の具の量が多すぎたか、シートが浮いていたかです。どちらか一方でもにじみは起き、両方が重なると目立ちます。
にじみの形を見ると、どちらが原因かの見当がつきます。図柄の縁全体がうっすら太っている場合は、絵の具の量が多く、全体的に回り込んだ可能性があります。ある一辺や一部分だけが大きくはみ出している場合は、その部分のシートが浮いていたか、塗っている途中でずれた可能性があります。
状況:濃い色を一回で出そうとスポンジにたっぷり絵の具を含ませ、縁をこするように塗った。
原因:余った絵の具と横向きの力で、シートの縁の下へ絵の具が押し込まれた。シートの浮きが重なると、はみ出しが大きくなる。
対策:スポンジの余分をパレットで落とし、真上から軽くたたいて薄く重ねる。塗る前に縁の浮きを指で確認する。
シートをはがすときも、勢いよくめくると、塗った色がシートと一緒に持っていかれることがあります。端からゆっくり、塗った面がシートにくっついていないか確かめながらはがしましょう。
乾かす時間はどれくらい?温度と塗り方で変わる公式の目安
表示の乾燥時間と、塗り重ねてよい時間は別物
ステンシルで色を重ねたり、別のシートで二色目を入れたりする場合、どれだけ待てばよいかは、使う塗料のメーカーが示す時間を基準にします。たとえばカンペハピオのマットペイントの製品情報では、刷毛塗りで20℃のとき約1時間(塗り重ねる時は4時間以上)と示されています。
ここで注目したいのは、乾燥時間と、塗り重ねる時の時間が別に書かれていることです。同じ製品の同じ条件でも、表面が乾くまでの時間と、上に次の層を重ねてよいまでの時間は違います。表面が乾いたように見えても、中まで乾ききっていない段階で次の色を重ねると、下の層がよれたり、色がにごったりすることがあります。
ありがちなのは、表面がさらっとしてきた段階で、二色目のシートをテープで貼ってしまうことです。テープをはがすときに一色目の塗膜まではがれる原因になります。
二色目を重ねる、シートを重ねて貼る、ニスで仕上げるといった次の工程に進むときは、塗り重ねの時間を基準にしましょう。製品によって数値は違うので、手元の塗料の缶や公式の製品情報で確認します。
| 製品と塗り方 | 20℃ | 冬期 |
|---|---|---|
| マットペイント(刷毛塗り) | 約1時間(塗り重ねる時は4時間以上) | 約2時間(塗り重ねる時は6時間以上) |
| マットペイント(スプレー) | 約30分(塗り重ねる時は2時間以上) | 約2時間(塗り重ねる時は4時間以上) |
| 水性ステイン+ | 約1時間(塗り重ねる時は4時間以上) | 約2時間(塗り重ねる時は8時間以上) |
出典:カンペハピオ公式のマットペイント・水性ステイン+の製品情報。値は各製品・条件ごとのもので、ほかの塗料には当てはまりません。
冬は時間が延びる。20℃と冬期の差を見る
上の表を見ると、どの製品も冬期のほうが乾燥時間、塗り重ねの時間ともに長く示されています。マットペイントの刷毛塗りなら、塗り重ねる時は20℃で4時間以上、冬期は6時間以上です。水性ステイン+では、塗り重ねる時は20℃で4時間以上に対し、冬期は8時間以上と示されています。
水性塗料は水分が空気中へ逃げることで乾くので、気温が低いと乾きが遅くなります。同じ製品でも、季節によって待つ時間がこれだけ変わるということです。また、同じ冬期でも製品によって塗り重ねの時間が違うことも表から読み取れます。ある製品の数値を、別の塗料にそのまま当てはめることはできません。
失敗しやすいのは、夏に作業したときの感覚のまま、冬に同じ段取りで進めてしまうことです。前回は乾いていた時間でも、冬は塗り重ねにはまだ早い可能性があります。
冬に作業する場合は、作業全体の時間に余裕をもたせ、二色目を入れる日を翌日に分けるなど、乾燥を待つ前提で段取りを組みましょう。暖房の吹き出し口のそばなどで無理に乾かすより、表示の時間を守るほうが確実です。
スプレーは乾きが早いが、塗り重ねの時間は別に守る
表のとおり、マットペイントはスプレーのほうが刷毛塗りより乾燥時間が短く、20℃で約30分(塗り重ねる時は2時間以上)と示されています。スプレーは塗料を細かい霧にして吹きつけるので、一度につく塗料の量が少なく、乾きが早くなると考えられます。
ステンシルでは、スプレーを使うと細かい凹凸のある素材にも色をのせやすい一方で、霧が広がりやすく、シートの外側まで色が飛ぶことがあります。シートの周りを新聞紙やマスキングテープで広めに覆っておくことが前提です。また、冬期は20℃のときより時間が延び、約2時間(塗り重ねる時は4時間以上)と示されています。
ありがちなのは、スプレーは乾きが早いからと、表面が乾いたところで次の色を吹きつけてしまうことです。スプレーでも、塗り重ねる時の時間は別に示されています。
スプレーを使う場合も、乾燥時間と塗り重ねの時間を区別して待ちましょう。スプレー缶を使うときの安全面の注意は、次の見出しで消費者庁の資料をもとに説明します。
ニスで仕上げるなら、上塗り前の乾燥を長めに
ステンシルを入れた木の小物や家具を、手でよくさわる場所で使う場合は、上からニスで仕上げることがあります。この場合、ステンシルの塗料が十分に乾いてからニスを塗ることが大切です。和信ペイントのステイン塗装手順でも、塗装後は完全に乾かすこと、特にニスで上塗りする前には十分な乾燥時間が必要なことが案内されています。
乾ききっていない塗料の上にニスを塗ると、ニスの刷毛でステンシルの色が引きずられ、せっかくの輪郭がぼやけてしまうことがあります。下の色とニスが混ざって、色がにごることもあります。
失敗しやすいのは、ステンシルを入れた当日中にニスまで終わらせようとすることです。特に冬は、表のとおり塗り重ねまでの時間が長くなるため、同じ日のうちに仕上げようとすると乾燥が足りないまま進みがちです。
ニスの塗り方そのものも、薄く数回に分けて塗り、一回ごとに乾かすのが基本です。ステインとニスを組み合わせた仕上げの手順は、下の記事で詳しく解説しています。

スプレーの安全と目的別の選び方|換気・火気・保管の注意
スプレーは換気と噴射距離、火気から離すことが前提
ステンシルにスプレー塗料を使う場合は、安全面の注意を先に確認しておきます。消費者庁のスプレー缶に関する注意喚起では、使用時について「十分に換気し、噴射時間及び距離を守りましょう」と呼びかけています。あわせて、火気のある場所の近くでは使用しないよう注意しています。
スプレー缶の中身は霧になって空気中に広がるため、閉め切った部屋で使うと、吸い込みやすくなります。同じ資料では、スプレー缶による事故として、吸入による呼吸困難、誤噴霧、穴開け処理時の引火によるやけど、接触による凍傷などが報告されていると紹介されています。噴射距離が近すぎると、塗料が一か所に集中してたれる原因にもなります。
ありがちなのは、寒い日や雨の日に、窓を閉めた室内でスプレーを使ってしまうことです。キッチンのコンロのそばなど、火気のある場所の近くで使うのも避けなければなりません。
スプレーを使うときは、窓を開けて風を通す、屋外の日陰で作業するなど、換気を確保しましょう。噴射時間と距離は、使う製品の缶の表示に従います。マスクやゴーグル、手袋を身につけると、吸い込みや目に入るのを防ぐ助けになります。
缶は40℃以上の場所に置かない、捨て方は自治体の指示に従う
スプレー缶は、使い終わったあとの保管と処分にも注意が必要です。消費者庁の注意喚起では、40℃以上になる高温の場所に置かないよう呼びかけています。廃棄については、各地方自治体の指示に従うよう案内しています。
スプレー缶の中には、塗料を押し出すためのガスが入っています。高温の場所に置くと缶の中の圧力が上がり、破裂などの危険につながります。夏の車内や、直射日光の当たる窓際、暖房器具のそばは、知らないうちに高温になりやすい場所です。
失敗しやすいのは、作業後にスプレー缶をベランダや車の中に置きっぱなしにすることです。使い切ったつもりの缶でも、中にガスが残っていることがあります。
処分するときは、住んでいる自治体のごみの出し方を確認し、その指示に従いましょう。穴を開けるかどうか、どの分別で出すかは自治体によって案内が異なります。自己判断で穴を開ける作業は、同じ資料で引火によるやけどの事故が報告されているので、自治体の指示がない限り行わないようにします。
子どもと楽しむ・小物をリメイクする・屋外の木部に塗る。目的別の選び方
ステンシルは、何に塗るか、誰と作業するかによって、選ぶ道具と色材が変わります。目的ごとに整理しておくと、準備の迷いが減ります。
子どもと一緒に紙や布で楽しむ場合は、古賀市教育委員会の子ども向け教室資料の方法が参考になります。紙には水彩絵の具だけ、布や木にはアクリル絵の具と木工用ボンドを1対1で混ぜたものを使い、シートの切り抜きなどカッターを使う作業は大人と一緒に行います。パレットは牛乳パックやクリアファイルで代用でき、片付けも手軽です。
家具や木の小物をリメイクしたい場合は、塗料の対象素材を確認するところから始めます。カンペハピオのマットペイントは、家具、インテリアグッズ、プラスチック製品、室内壁などを対象素材に挙げています。塗る前に汚れ落としと研磨をして、表示の乾燥時間を守ります。
板べいやガーデニング用品など屋外の木部に塗りたい場合も、マットペイントの対象素材には屋内外の木部が含まれています。屋外では天気の影響を受けやすいので、雨天や湿度の高い曇天、気温の低い日を避けて作業日を選びましょう。
ステンシルのやり方のまとめ
最初の一歩は、本番の素材と同じ端材か端切れを1枚用意して、同じシートで何度か試し塗りをすることです。スポンジに含ませる絵の具の量と押し当てる力を変えながら、輪郭がいちばんくっきり出る加減を確かめてから本番に移ると、失敗をぐっと減らせます。
※塗料の乾燥時間や対象素材は製品・条件によって異なります。最新情報は各メーカーの公式サイトでご確認ください。

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