薄い鉄板やアルミのパイプに、あとからボルトを留めたい。でも裏側からナットを押さえようにも手が入らない。こういう場面で名前が出てくるのがエビナットです。金物売り場で小さな袋に入って並んでいるのを見て、普通のナットと何が違うのか、どうやって取り付けるのか迷った人も多いのではないでしょうか。
先に結論をいうと、エビナットは板の穴に表側から差し込み、専用の工具(ナッター)で引っぱって裏側を潰し、板を挟みこんで固定する部品です。こうすると、ねじ山を切れないほど薄い板や、裏に手が入らないパイプにも雌ねじ(ねじ穴)を後付けできます。選ぶときに見る数字は、ねじの呼び(M4・M5・M6など)、取り付けられる板の厚さの範囲(かしめ板厚)、あけるべき下穴の径の3つです。ここが合っていれば、作業そのものは手動のナッターでも進められます。
この記事では、エビナットの仕組み、材質と頭の形の違い、型番の読み方、袋に書かれた数字の見方、ナッターの種類、取り付け手順、うまく付かないときの原因までを、製造元のロブテックスグループの公式情報を軸に整理します。
・エビナットが片側からだけで固定できる仕組みと、普通のナット・リベットとの違い
・アルミ・スチール・ステンレスの材質と、平頭・薄頭の選び方、型番の読み方
・下穴径とかしめ板厚の見方、手動ナッターとコードレスナッターの違い
・取り付け手順と、空回り・ぐらつきが起きる原因
エビナットとは?薄い板に後からねじ穴をつくる部品

いちばんの価値は「裏に手が届かなくても留められる」こと
エビナットの役割をひとことでいえば、片側からの作業だけで、薄い板やパイプに雌ねじを作ることです。普通のボルトとナットで留めるなら、表からボルトを差し、裏でナットを押さえて回す必要があります。ところが角パイプや丸パイプのように中が閉じた形(閉断面)では、裏側に指も工具も入りません。
エビナットはこの問題を、ナット自体を板に固定してしまうことで解決します。メーカーの手動ナッターの製品ページでも、「タップ立ての難しい薄板や、裏面に手の入らない閉断面に、片側から簡単にナット部(雌ねじ)を作ることができるブラインドナットです」と説明されています。
家のDIYでいえば、角パイプで組んだラックの脚にアジャスターやキャスターを付けたい、薄い金属の箱に取っ手を付けたい、といった場面です。やりがちなのは、パイプの端から普通のナットを落とし込んで何とか押さえようとして、結局ナットが中で転がってしまうパターン。最初から片側固定の部品を選ぶほうが、仕上がりも作業時間も安定します。製品ページの用途欄に、薄板・パイプ・閉断面といった言葉があるかを最初に確認しておくと選びやすくなります。
タップ加工や溶接ナットと比べて、どこが違う?
板に雌ねじを作る方法は、エビナットだけではありません。板に直接ねじ山を切るタップ加工や、ナットを板に溶接する方法もあります。それでもエビナットが選ばれるのは、薄い板でも、特別な設備なしで、片側から付けられるという条件がそろっているからです。
理由は板の厚みにあります。タップでねじ山を切るには、ボルトを支えるだけのねじ山の数が要ります。薄い板では切れるねじ山が少なく、締めたときに山がつぶれて空回りしやすくなります。溶接ナットなら強度は出せますが、溶接の設備と技能が必要で、家の作業場で気軽にできる方法ではありません。
エビナットは、筒状のナットの胴を裏で潰して板を挟むので、板そのものにねじ山を作る必要がありません。ねじ山はエビナット側にあり、板は挟まれているだけです。やりがちな失敗は、薄いアルミ板に無理にタップを立て、ボルトを締めた瞬間に山ごと抜けてしまうこと。板が薄いと感じたら、ねじ山を板に頼らない方法へ切り替える、というのが判断の目安です。
ブラインドナット・リベットナットとの呼び名の関係
エビナットは、ロブテックスグループの製品名です。部品の種類としてはブラインドナットに分類され、メーカーのカタログでも「ブラインドナット・ナッター」という区分の中に並んでいます。ブラインド(見えない)という名前は、裏側を見ないまま取り付ける部品であることから来ています。
そのため、売り場やネット通販では、エビナットという名前のほかに、ブラインドナットや、販売店によってはリベットナットのような名前で同じ種類の部品が並んでいることもあります。取り付け工具も、メーカーの呼び名ではナッターです。名前が違っても、片側から差し込んで裏を潰す、という基本の仕組みは共通しています。
規格の面で補足すると、JIS B 1087:2004はブラインドリベットの機械的試験を定めた規格(ISO 14589:2000対応)です。ブラインドナット自体の寸法を定めたJIS番号は、今回の調査では確認できませんでした。寸法は各メーカーの型番ごとのデータで確認するのが確実です。ブラインドナット全般の仕組みは、次の記事でも解説しています。

製造元と、いま買える品番の確かめ方
エビナットの製造元は株式会社ロブテックスファスニングシステムです。公式の製品カタログ掲載ページでは、ブラインドナット・ナッターの製品カタログが2026年03月17日付で掲載されており、同社サイトのデジタルカタログ「LFS製品カタログ2026 vol.1」では、ブラインドナットは45ページから載っています。
注意したいのは、店頭や手元にある古い袋の型番です。ロブテックスの製造終了品リストでは、パック入りのNAD-P、NAK-P、NSD-P、NSK-Pが2021年5月に製造終了となり、後継はNAD-MP、NAK-MP、NSD-MP、NSK-MPと案内されています。エビナットという製品そのものが終わったわけではなく、終了したのはパック入りの旧型番です。
やりがちなのは、以前買った袋の型番で検索して見つからず、別の寸法の部品を買ってしまうこと。旧型番しか手元にないときは、後継の型番に読み替えたうえで、寸法表の数字を突き合わせてから買い足すと安心です。
エビナットはブラインドナットの一種で、ねじ山は部品側にあり、板は挟まれているだけです。だから板にねじ山を切れない薄板や、裏に手が入らないパイプでも雌ねじを後付けできます。パック入りの旧型番(NAD-Pなど)は2021年5月に製造終了しており、後継は末尾がMPの型番です。
裏側でナットがつぶれて止まる仕組み
マンドレルで引っぱると、胴がふくらんで板を挟む
エビナットが片側から固定できるのは、ナッターのマンドレル(ねじ付きの軸)でナットを引っぱり、板の裏側にある胴の部分を潰すからです。潰れた胴は外側へふくらみ、表側のフランジ(つば)とのあいだで板を挟みこみます。
流れを追うと、まずナッターのマンドレルをエビナットの雌ねじにねじ込みます。その状態でエビナットを下穴に差し込み、フランジを板に当てます。ナッターを操作すると(手動のちょっとナッターⅡなら、マンドレルを固定したまま六角ナットをレンチで回すと)、マンドレルが手前に引かれ、エビナットの雌ねじ部分が表側に引き寄せられます。フランジは板に当たって動けないので、そのあいだの胴が縮んで潰れ、裏側にこぶのようなふくらみができる、という順番です。
この仕組みから、うまくいくかどうかは板の裏で胴がきれいに潰れるかどうかで決まります。下穴が大きすぎると胴が穴の中で逃げ、板が厚すぎると潰れる部分が裏に出てこない。後の章で出てくる下穴径とかしめ板厚の数字は、どちらもこの潰れ方を正しく起こすための条件です。
マンドレル=ナッターの先に付いている、ねじが切られた軸。エビナットにねじ込んで引っぱる役目をします。
かしめ=部品を変形させて固定すること。エビナットでは胴を潰して板を挟むことを指します。
フランジ=エビナットの頭にあるつばの部分。表側で板に当たる面です。
かしめ板厚=そのエビナットで固定できる板の厚さの範囲。型番ごとに決まっています。
板の厚さによって、潰れ方が変わる理由
エビナットには、型番ごとに取り付けられる板の厚さの範囲(かしめ板厚)が決められています。これは、胴の潰れる長さが部品の形で決まっているからです。
板が薄いと、フランジから裏側までの距離が短くなり、そのぶん潰れる胴の長さが長くなります。逆に板が厚いと、胴の大部分が穴の中に収まってしまい、裏側で潰れてふくらむ部分が足りなくなります。どちらも範囲を外れると、挟む力が不足して、ボルトを締めたときにエビナットごと回ってしまう原因になります。
工具の側でもこの点は意識されています。メーカーのコードレスナッター N1B1 では、ストローク(マンドレルを引く量)を0.1~10mmの範囲で設定できると案内されています。引く量を調整できる工具が用意されていること自体が、部品と板の組み合わせごとに適切な潰し方が違うことを示しています。手動のナッターを使う場合も、袋に書かれたかしめ板厚の範囲に板が入っているかを、取り付ける前に必ず確認しましょう。
リベットとの違いは「ねじが残る」こと
片側から付けて裏を潰す、という点では、エビナットはブラインドリベットとよく似ています。違いは、取り付けたあとに雌ねじが残るかどうかです。
ブラインドリベットは、マンドレル(芯)を引き抜いて本体を潰し、芯を途中で切って固定します。固定した時点で2枚の板はつながり、基本的には外すことを想定していません。エビナットは潰したあともナットとしての雌ねじが残るので、ボルトを差し込んで締めれば部品を留められ、ボルトを抜けば部品を外せます。
この違いは用途の分かれ目になります。外す必要のない2枚の板をつなぐならリベット、取っ手やキャスターのように交換や取り外しの可能性がある部品を留めるならエビナット、という使い分けです。やりがちな失敗は、後でメンテナンスしたい部品をリベットで留めてしまい、外すときに穴を壊すこと。付ける前に、その部品を外す日が来るかを一度考えておくと選び間違いが減ります。

実は、強く引けば引くほど良いわけではない
意外と知られていないけれど、エビナットは強く潰せば潰すほどしっかり付く、という部品ではありません。引きすぎると、潰れるべき胴ではなく、マンドレルがねじ込まれている雌ねじの部分に負担がかかるからです。
ナッターはマンドレルとエビナットの雌ねじをかみ合わせて引っぱるので、力の入り方によっては、肝心のねじ山を傷める可能性があります。メーカーのコードレスナッター N1B1 には「ネジ破損防止機能」が搭載されていると案内されています(M3・M4を除く)。メーカーが専用の機能を用意しているということは、かしめの工程でねじ山が傷むことが現実の問題として想定されている、と読み取れます。
手動のちょっとナッターⅡでは、引く量を「六角ナット回転数」で管理します。取扱説明書の裏面の表で、エビナットの系列・サイズと板の厚さから回転数を確かめ、その数だけ回すのが基本です。取扱説明書は、回転数が足りなくても回しすぎても適正なかしめができず、母材から脱落したり、エビナットが破損したりする場合があるとしています。手応えに頼ってもう一回し加えるより、表の回転数で止めてボルトで具合を確かめるほうが、失敗したときの損も小さく済みます。
材質と頭の形、どれを選べばいい?

アルミ・スチール・ステンレスは、取り付ける板に合わせる
エビナットには、アルミ・スチール・ステンレスの材質があります。選ぶ基準は、取り付ける板の材質と、使う場所の環境です。
メーカーのコードレスナッター N1B1 の製品ページでは、「エビナット適用材質:アルミ、鉄、ステンレス」と案内されています。手動のちょっとナッターⅡも、取扱説明書で対象エビナットを「アルミ、スティール、ステンレス」としています。ただし、同じ板厚でも、かしめに必要な六角ナットの回転数は材質とサイズで変わり、取扱説明書の裏面に系列別の表が載っています。
家のDIYでは、アルミのパイプや板にはアルミのエビナット、鉄板には鉄のエビナット、屋外や水回りで錆を避けたいならステンレス、という考え方が出発点になります。やりがちなのは、強そうだからとステンレスを選び、かしめ板厚の範囲を見落とすパターンです。M6で比べると、メーカーの仕様表ではステンレスのNTK6Mが0.3~2.0mm、アルミのNAK6Mが1.0~3.2mmと、材質によって範囲が違います。購入前には、手持ちのナッターがその材質に対応しているかを、製品ページの適用材質の欄で確認しておきましょう。
平頭と薄頭は、表に出る出っ張りの差
エビナットの頭部(フランジ)には、平頭と薄頭があります。違いは、取り付けたあとに板の表側にどれだけ出っ張るかです。
平頭はフランジに厚みがあり、板に当たる面がしっかりしています。薄頭はその名のとおりフランジが薄く、表に出る段差が小さくなります。たとえば販売店の商品ページに載っている薄頭ステンレスの例(NTK6MP)では、頭部がスモールフランジ、フランジ厚さ0.7mmと表示されています。
使い分けの目安は、エビナットの上に何を重ねるかです。取り付ける部品が板にぴったり密着してほしい場合、フランジの段差があると部品が浮いてガタつくことがあります。そういう場所では薄頭が向いています。一方、上に何も重ねない、あるいは段差が気にならない場所では、平頭でも問題になりにくいでしょう。やりがちな失敗は、蝶番や金具の下に平頭を使い、金具が傾いて扉の閉まりが悪くなること。重ねる部品がある場合は、その部品の座面とフランジの大きさを見比べてから選ぶと安心です。
型番の読み方は「頭の形」と「材質」の組み合わせ
エビナットの型番は、頭の形と材質の組み合わせで読めるようになっています。販売店の型番表記では、NADが平頭・アルミ、NAKが薄頭・アルミ、NSDが平頭・スチール、NSKが薄頭・スチールとして並んでいます。メーカーの製品ページでも、NADは「アルミニウム(ラージフランジ)」、NAKは「アルミニウム(スモールフランジ)」、NSDは「スティール(ラージフランジ)」、NSKは「スティール(スモールフランジ)」、ステンレスのNTKは「ステンレス(スモールフランジ)」として分類されていて、販売店のいう平頭がラージフランジ、薄頭がスモールフランジにあたります。M6で比べると、フランジの厚さはNAD6Mが1.5mm、NAK6Mが0.5mmです。
型番の後ろには、ねじの呼びを示す数字が続きます。手動ナッターのセットに入っている例では、NAK4M、NAK5M、NAK6Mのように、M4・M5・M6のねじに対応する型番が並びます。末尾のMPは、前の章で触れたパック入り後継品の型番です。
下の表は、メーカー公式ページと販売店の型番表記から、工具・DIYの教科書が整理したものです。
| 型番の頭 | 頭部の形 | 材質 | メモ |
|---|---|---|---|
| NAD | 平頭 | アルミ | パック入りNAD-Pは2021年5月製造終了、後継NAD-MP |
| NAK | 薄頭 | アルミ | 手動ナッターのセットにNAK4M・NAK5M・NAK6Mが入る |
| NSD | 平頭 | スチール | パック入りNSD-Pは製造終了、後継NSD-MP |
| NSK | 薄頭 | スチール | パック入りNSK-Pは製造終了、後継NSK-MP |
| NTK6MP(例) | スモールフランジ | ステンレス(SUS303) | 販売店の商品ページの表示。M6×1.0、入数10個 |
※平頭=ラージフランジ、薄頭=スモールフランジ(メーカー製品ページの表記)。寸法は購入する型番のデータで確認してください。
違う金属どうしを組み合わせるときの注意
材質を選ぶときに見落としやすいのが、板とエビナット、さらにそこへ締めるボルトの材質の組み合わせです。アルミとステンレスのように種類の違う金属が、水分のある環境で触れ合うと、電位の差によって片方の腐食が進みやすくなるとされています。
屋内の乾いた場所ならあまり問題になりませんが、ベランダや屋外の物置、水回りで使う棚のように濡れる場所では差が出ます。やりがちなのは、アルミの角パイプに錆びにくいからとステンレスのエビナットを使い、雨にさらされる場所に置いてしまうこと。錆びにくい部品を選んだつもりが、接している側のアルミが傷む原因になりかねません。
迷ったときは、板とエビナットを同じ系統の材質にそろえるのが考え方の基本です。ボルトも含めて、濡れる場所で使うのか、乾いた場所で使うのかを先に決めておくと、材質選びの迷いが減ります。
袋の数字はどこを見る?下穴径とかしめ板厚の読み方
最初に見るのは、かしめ板厚の範囲
エビナットを買うとき、最初に確認したいのは、かしめ板厚の範囲に自分の板が入っているかどうかです。ねじの呼びや材質が合っていても、板厚が範囲外なら正しく固定できません。
たとえば販売店の商品ページに載っている薄頭ステンレスのNTK6MPでは、かしめ板厚が0.3~2.0mmと表示されています。この範囲に入る板であれば、胴が裏側で適切に潰れて板を挟める、という意味です。範囲より薄い板でも厚い板でも、前の章で見たように胴の潰れ方が変わり、挟む力が足りなくなります。
家のDIYでは、パイプの肉厚や板の厚さを正確に把握しないまま買ってしまうのがよくある失敗です。パイプの肉厚は外から見ただけではわかりにくいので、パイプ本体の商品表示や、切り口をノギスで測った値で確認しましょう。測るときは、塗装の厚みや切り口のバリを含めないように気をつけます。かしめ板厚は型番ごとに違うので、袋や商品ページに書かれた範囲を、必ずその型番の数字で確認してください。
下穴径は、エビナットの外径よりわずかに大きい
次に見るのが下穴径です。エビナットは板の穴に差し込んで使うので、下穴はエビナットの胴の外径よりわずかに大きくあけます。
先ほどのNTK6MPの例では、外径9.0mmに対して下穴径9.1mmと表示されています。穴がこれより小さければエビナットが入らず、大きすぎれば胴が穴の中で逃げてしまい、潰れても板をしっかり挟めません。ほんの少しの差が、固定できるかどうかを左右します。
ここで気をつけたいのは、下穴径はねじの呼びとは別の数字だということです。M6のエビナットだからといって、ボルトの太さに合わせた穴をあけても、胴が入りません。下穴径は、ねじの太さではなく、エビナットの胴の太さから決まります。ドリルを選ぶときは、袋の下穴径の表示をそのまま基準にし、手持ちのドリルにぴったりの径がなければ、無理に近い径で代用せず、その径のドリルを用意するのが確実です。
M6のボルトを留めたいからと、ボルトの太さに合わせた穴をあけてしまう失敗です。エビナットは胴ごと穴に差し込む部品なので、そのままでは入りません。原因は、下穴径とねじの呼びを同じ数字だと思い込むことにあります。対策は、袋や商品ページに書かれた下穴径(NTK6MPなら9.1mm)を確認し、その数字でドリルを選ぶことです。
ねじの呼びは、留めたいボルトから逆算する
ねじの呼び(M4・M5・M6など)は、最終的にエビナットへ締めるボルトの太さに合わせて選びます。M6のエビナットにはM6のボルト、M5にはM5のボルト、という対応です。
NTK6MPの例では、ねじはM6×1.0と表示されています。M6はねじの太さ、1.0はねじ山の間隔(ピッチ)を表します。同じM6でもピッチが違えばボルトは入らないので、手持ちのボルトと組み合わせる場合は、ピッチまで確認すると安心です。
もう1つ大事なのが、ねじの呼びとナッターの対応です。メーカーの手動ナッターは、M4用(HNC24M)、M5用(HNC25M)、M6用(HNC26M)とサイズごとに分かれています。コードレスナッター N1B1 はM3、M4、M5、M6、M8、M10に対応すると案内されています。やりがちなのは、エビナットだけを先に買い、手持ちのナッターでは対応しないサイズだった、というパターン。ボルト、エビナット、ナッターの3つのねじの呼びをそろえてから買うのが、無駄のない順番です。
寸法は型番ごとに違う。必ず購入型番の数字で確認
ここまでNTK6MPを例にしてきましたが、下穴径・外径・全長・かしめ板厚は、型番ごとに異なります。同じM6でも、材質や頭の形が違えば数字が変わる可能性があるので、例の数字を他の型番にそのまま当てはめないでください。
強度の数字の読み方にも注意が要ります。メーカーの仕様表にある「せん断強度」は「ネジ山せん断強度」のことで、ちょっとナッターⅡの取扱説明書は「カタログ記載のエビナットの強度は破壊強度です。安全率を十分に考慮してください。」としています。製品ページの使用上のご注意でも、かしめ板厚・下穴径は指定寸法を守り、安全率を十分に考慮して施工するよう案内されています。
理由は、エビナットの寸法が、潰れ方を設計した結果として決まっているからです。胴の太さ、長さ、肉厚、材質の硬さの組み合わせで、何ミリの板をどれくらいの力で挟めるかが変わります。だからこそ、メーカーは型番ごとに下穴径とかしめ板厚を示しています。
参考として、販売店の商品ページに載っているNTK6MPの表示を一覧にしておきます。購入する型番の数字を確認するときの、項目の見方の参考にしてください。
| 材質・ねじ | ステンレス(SUS303)、M6×1.0 |
| かしめ板厚・下穴径 | かしめ板厚0.3~2.0mm、下穴径9.1mm |
| 外径・全長・頭部 | 外径9.0mm、全長14.1mm、スモールフランジ(フランジ厚さ0.7mm) |
| 確認のコツ | 入数10個。寸法は型番ごとに異なるため、購入する型番のデータで確認する(出典:販売店の商品ページ) |
ナッターは手動とコードレス、何が違う?
手動ナッターは、サイズごとに1本ずつ
家のDIYでエビナットを数個付けるなら、まず候補になるのが手動のナッターです。メーカーのちょっとナッターⅡは、M4用のHNC24M、M5用のHNC25M、M6用のHNC26Mの3種類に分かれています。
セット内容は、ナッター本体×1、マンドレル×1、六角ナット×2、エビナット×6です。HNC24MにはNAK4M×6、HNC25MにはNAK5M×6、HNC26MにはNAK6M×6が入っていて、買ってすぐに試せる構成になっています。工具の重さは80g、参考価格は各2,470円(税別)と案内されています。
注意したいのは、1本で全サイズに対応するわけではない点です。M5のエビナットを付けたいのにM6用を買っても使えません。やりがちなのは、とりあえず1本買ってから、留めたいボルトのサイズと合わないことに気づくパターン。最初にボルトのサイズを決め、そのサイズのナッターを選ぶ順番にしましょう。セットに入っている六角ナットなど付属部品の扱いは、取扱説明書の手順に従ってください。
コードレスナッター N1B1 は、数と種類をこなす道具
たくさんのエビナットを、複数のサイズで付ける場面向けなのが、メーカーのコードレスナッター N1B1 です。製品ページでは、適合ねじがM3、M4、M5、M6、M8、M10、エビナットの適用材質がアルミ、鉄、ステンレスと案内されています。
仕様を見ると、最大引張力は19.6kN、ストロークは0.1~10mmで設定でき、重量は2.6kg(電池装着時)です。電池はDC18V/2.5Ahが標準で、「満充電1回あたり1000個以上のエビナットが締結可能」と案内されています(BPL1825使用時、エビナットの種類により変わる)。ねじ破損防止機能もあり(M3・M4を除く)、参考価格は275,000円(税別)です。
こうした仕様は、同じ作業を大量に繰り返す現場を想定したものです。家で棚を1台作るためだけに選ぶ道具ではない、と考えておくと判断を誤りません。手動とコードレスの違いは、どちらが優れているかではなく、作業の量とサイズの幅が違うということです。
電気ナッター EN410A は2025年9月に製造終了
中古品や在庫品で見かけることがあるのが、電気ナッターのEN410Aです。メーカーの製造終了品リストでは、EN410Aは2025年9月に製造終了となり、代替品としてN1B1が案内されています。
製造終了した工具は、すぐに使えなくなるわけではありません。ただ、消耗部品や対応するマンドレルを今後も手に入れられるかは、別の問題です。マンドレルはエビナットのねじにかみ合わせて引っぱる部品なので、使っているうちに傷むことがあります。古い工具を手に入れる場合は、その工具に合う部品がいま手に入るかを、メーカーの情報で確認しておくと安心です。
保証や修理の受付、交換部品の可否については、メーカー公式の案内が正確です。中古で手に入れた工具の扱いに迷ったら、メーカーの公式サイトの問い合わせ窓口を確認してください。
作業の量で選ぶ:シーン別の考え方
ナッター選びの基準は、付けるエビナットの数と、使うねじのサイズの種類です。
たとえば、角パイプのラックの脚4本にアジャスターを付ける程度なら、使うのは1サイズで数も少ないので、そのサイズの手動ナッターで足ります。取っ手はM5、脚はM6のようにサイズが2種類以上になるなら、手動ナッターをサイズごとにそろえることになります。一方、業務で同じ作業を大量に繰り返す場合は、コードレスナッターのように数と種類をこなせる工具が選択肢に入ります。
手動のちょっとナッターⅡで気をつけたいのは、材質とサイズで回す回数が変わることです。取扱説明書の表は、アルミ(NAK・NAD)、スチール(NSK・NSD)、ステンレス(NTK)などの系列ごとに分かれていて、同じ板厚でも必要な回転数が違います。マンドレルと六角ナットは消耗品なので、数が多いときは回転が重くなっていないかにも気を配り、1個ずつボルトで確認しながら進めるのがコツです。
| 項目 | ちょっとナッターⅡ(手動) | コードレスナッター N1B1 |
|---|---|---|
| 対応ねじ | M4用・M5用・M6用で1本ずつ(HNC24M・HNC25M・HNC26M) | M3、M4、M5、M6、M8、M10 |
| 重さ | 80g | 2.6kg(電池装着時) |
| 特長 | エビナット×6入りのセット。閉断面にも片側から作業できる | ストローク0.1~10mm、ねじ破損防止機能(M3・M4を除く) |
| 参考価格 | 各2,470円(税別) | 275,000円(税別) |
| 向く場面 | 1サイズで数個〜少量付ける家のDIY | 複数サイズを大量に付ける業務 |
エビナットの取り付け手順は4ステップ
下穴は、袋の数字どおりにまっすぐあける
取り付けの出来は、最初の下穴でほぼ決まります。袋や商品ページに書かれた下穴径のドリルで、板に対してまっすぐ穴をあけましょう。
穴が斜めになると、エビナットも斜めに入り、潰したときに胴が片寄って潰れます。そうなると、フランジが板から浮いたり、後からボルトが斜めに入ったりする原因になります。金属の板やパイプにあける場合は、ドリルの先が滑りやすいので、穴の中心にあらかじめ目印を付けておくと位置がずれにくくなります。
あけたあとは、穴のふちのバリ(削りかすの出っ張り)を取っておきます。バリが残っていると、フランジが板にぴったり当たらず、潰したときにすき間ができることがあります。パイプにあける場合は、穴の中に削りかすが落ちていないかも確認しましょう。ドリルでの穴あけの基本や、抜けぎわで失敗しない理屈は、次の記事でまとめています。

ナッターのマンドレルにエビナットをねじ込む
次に、ナッターの先にあるマンドレルにエビナットをねじ込みます。ここでのポイントは、エビナットの雌ねじに、マンドレルのねじを最後まで正しくかみ合わせることです。
ねじ込みが浅いと、引っぱる力がねじ山の一部にだけかかり、山を傷めたり、マンドレルがエビナットから抜けたりする原因になります。逆に、斜めにねじ込むと、ねじ山を傷めたまま取り付けることになり、後からボルトが入らなくなることがあります。手で回して、軽い力でまっすぐ入っていくのを確認しながらねじ込みましょう。
ナッターに付属の部品の使い方や、マンドレルをどこまでねじ込むかは、工具ごとに決まっています。ちょっとナッターⅡの取扱説明書では、六角ナットを通したマンドレルを本体に差し込み、エビナットを本体に接するまでねじ込んだうえで、エビナットの先端からマンドレルのねじ山が1山出るように六角ナットの位置を調整します。かしめのたびに、マンドレルの六角ナット付近のねじ山へ潤滑油かグリスを塗るよう指示されています。サイズの違うマンドレルとエビナットを組み合わせないことも、基本の確認です。
下穴に差し込み、垂直を保ったまま締め込む
エビナットをセットしたナッターを、下穴に差し込みます。フランジが板にぴったり当たっていることを確かめたら、ナッターを板に対して垂直に保ったまま、かしめに入ります。ちょっとナッターⅡでは、レンチやスパナで六角ナットをくわえ、マンドレルに六角棒レンチをセットし、六角棒レンチは回さずに固定したまま、六角ナットを時計回りに回します。
六角ナットを回すと、マンドレルが引かれて胴が潰れ始めます。このとき、ナッターが斜めに傾くと、胴が片側だけ潰れてしまいます。両手が六角棒レンチとレンチでふさがるので、板やパイプを先に固定し、傾かない姿勢を作ってから回しましょう。パイプのように丸い面へ付ける場合は、パイプを固定しておかないと、回す力で転がって角度がずれやすくなります。
どこまで回すかは、手応えではなく数字で決めます。ちょっとナッターⅡの取扱説明書の裏面の表で、使うエビナットのサイズと板の厚さから「六角ナット回転数」を確認し、その回転数だけ回します。回転数が足りなくても回しすぎても適正なかしめができず、母材から脱落したり、エビナットが破損したりする場合があると取扱説明書は注意しています。作業前に取扱説明書をよく読み、「事故やけがを未然に防ぐために」と書かれた警告事項を守ってください。
マンドレルを外し、ボルトで具合を確かめる
潰し終わったら、ちょっとナッターⅡでは六角ナットを反時計回りに回して緩め、レンチから外してから、マンドレルを反時計回りに回してエビナットから抜き取ります。これで板には雌ねじだけが残ります。
取り付けがうまくいったかは、実際に使うボルトを手でねじ込んで確かめるのが確実です。手で軽くねじ込めて、締めていってもエビナットが一緒に回らなければ、固定できていると判断できます。裏側が見える場所なら、胴がふくらんで板を挟んでいるかも目で確認しておきましょう。
やりがちなのは、確認せずにすべてのエビナットを付け終え、部品を組み立てる段階で1つだけ空回りしているのに気づくパターンです。そうなると、組み立てた部品を外してやり直すことになります。1つ付けたらボルトで確認、を繰り返すほうが、結果として早く終わります。
空回り・ぐらつき…うまく付かない原因はどこにある?
ボルトを締めるとエビナットごと回ってしまう
エビナットの失敗でいちばん多いのが、ボルトを締めると、エビナットごと穴の中で回ってしまう空回りです。原因は、胴が板を挟む力が足りていないことにあります。
挟む力が足りなくなる理由は、主に3つ考えられます。1つは下穴が大きすぎて、潰れた胴が穴の中で逃げてしまっていること。2つ目は板厚がかしめ板厚の範囲から外れていて、胴が適切に潰れていないこと。3つ目は、かしめの量(ちょっとナッターⅡなら六角ナットの回転数)が板厚に合っておらず、適正に潰れていないことです。
対策は、原因を順に疑うことです。まず、あけた穴の径が袋の下穴径と合っていたか、次に板厚が範囲内か、最後に六角ナットの回転数が取扱説明書の表どおりだったかを確認します。一度空回りしたエビナットは、締め直しても固定しにくいので、取り外して新しいものに付け替えるのが基本です。そのとき、同じ穴が大きく広がってしまっていたら、同じサイズのエビナットではまた空回りする可能性があります。
パイプの肉厚や板の厚さを確かめずにエビナットを買い、かしめ板厚の範囲外の板に付けてしまう失敗です。範囲外だと胴が裏で正しく潰れず、ボルトを締めた瞬間に空回りします。原因は、ねじの呼びだけを見て、かしめ板厚の表示を見落とすことです。対策は、板の厚さを測ってから、その厚さが範囲に入る型番を選ぶことです。
ねじ山が傷んでボルトが入らない
取り付けたあと、ボルトが途中で止まって入らない、あるいはひっかかる場合は、エビナットのねじ山が傷んでいる可能性があります。
原因として考えられるのは、マンドレルを浅くねじ込んだまま引っぱったこと、斜めにねじ込んだこと、そして取扱説明書の回転数を超えて回しすぎたことです。いずれも、引く力が雌ねじの一部に集中して、山がつぶれたりゆがんだりします。メーカーがコードレスナッターにねじ破損防止機能を設けていることからも、かしめの工程でねじ山が傷むことは起こりうる問題だとわかります。
対策は、ねじ込みを最後まで、まっすぐ行うこと、そして取扱説明書の回転数を超えて回さないことです。ボルトのピッチがエビナットと合っていない場合も入らないので、M6×1.0のように、ねじの呼びとピッチがそろっているかも確認しましょう。ねじ山が傷んだ部品をそのまま使うと、ボルトが固着して外せなくなることもあるので、怪しいと感じたら付け替えたほうが後の手間が少なくて済みます。
フランジが浮く、部品がガタつく
エビナットは固定できているのに、上に重ねた部品がガタつく、あるいはフランジと板のあいだにすき間がある、という失敗もあります。
フランジが浮く原因は、下穴のふちのバリが残っていたことや、ナッターを斜めに保ったまま潰したことが考えられます。どちらも、フランジが板に面で当たらないまま固定されてしまいます。部品のガタつきは、平頭のフランジの段差が、重ねた部品の座面に干渉していることがよくある原因です。
対策は、穴あけのあとにバリを取ること、潰すときに垂直を保つこと、そして重ねる部品がある場所では薄頭を選ぶことです。取り付けたあとに気になる段差が残った場合、エビナットを削ったり叩いたりして段差を消そうとするのは、固定を弱める原因になりかねません。部品の座面とフランジの組み合わせを見直すほうが確実です。
パイプ・角パイプに付けるときに気をつけること
エビナットがよく使われるのは、裏に手が入らないパイプや角パイプです。ただ、平らな板とは違う注意点があります。
丸パイプの場合、表面が曲がっているので、フランジが面で当たりにくくなります。平らな板に比べて、フランジと表面のあいだにすき間ができやすいことを意識しておきましょう。角パイプなら、平らな面に付ければ板と同じように扱えますが、パイプの肉厚がかしめ板厚の範囲に入っているかは、平らな板以上に見落としやすいポイントです。
また、パイプの中は見えないので、胴がきちんと潰れているかを目で確かめられません。そのぶん、ボルトでの確認が大切になります。やりがちなのは、パイプの端に近すぎる位置に穴をあけ、潰した胴がパイプの角や端にかかってしまうパターン。穴の位置は、裏側で胴がふくらむ空間があるかを考えて決めましょう。
まとめ:3つの数字を合わせれば、薄板にねじ穴は作れる
最初の一歩は、エビナットを付けたい板やパイプの厚さを測り、留めたいボルトのサイズを決めることです。その2つが決まれば、かしめ板厚の範囲に入る型番と、同じサイズのナッター、袋に書かれた下穴径のドリルがそろい、あとは1個付けるごとにボルトで確認しながら進めるだけです。
※型番・寸法・価格は変更されることがあります。最新情報はメーカー公式サイトでご確認ください。

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