洗面所やトイレの床を張り替えようとホームセンターの接着剤売り場に行くと、クッションフロア用・床用・ピールアップ用と似た名前の缶が並んでいて、どれを選べばよいのか迷います。フロアクッション接着剤で検索している人の多くは、まさにこの場面にいるはずです。
先に結論を言うと、接着剤選びの出発点は商品名ではなく貼る床(下地)の種類です。床材メーカーのサンゲツは施工要領書で、モルタルのように水を吸う下地(水分グレードⅠ)には水性の2系統、既存の床への重ね貼りのように水を吸わない下地には溶剤形の2系統を指定しています。そこに、あとで剥がす予定があるかどうか(賃貸かどうか)を重ねると、候補は自然に絞れます。
この記事では、セメダインの製品情報、サンゲツの施工要領書、東リのカタログ、JIS A 5536 という一次情報だけを使って、接着剤の系統の違い、塗布量と待ち時間の意味、膨れや浮きが起きる理由を、仕組みから順番に整理します。
・クッションフロア用接着剤の4つの系統と、下地ごとの選び分け
・セメダイン CL-7N、床用EM341、東リ エコAR600の公式値の違い
・塗布量・待ち時間・貼り付け可能時間をどう読めばよいか
・膨れ・浮き・はがれが起きる理由と、施工要領書にある防ぎ方
フロアクッション接着剤とは?クッションフロア用との関係と4つの系統

フロアクッションはクッションフロアの語順違いと考えてよい
フロアクッション接着剤という言葉で探されているのは、塩化ビニル系のシート床材であるクッションフロアを床に貼るための接着剤と考えて差し支えありません。メーカーの製品名や施工資料ではクッションフロア(またはクッションフロアー)と書かれるため、売り場や通販でもこちらの表記で探すほうが見つけやすくなります。
理由は単純で、接着剤メーカーは用途欄に貼る床材の名前を書いているからです。たとえばセメダインの CL-7N は製品名に(クッションフロアー用)と入っていて、用途欄は「クッションフロア、カーペット、ニードルパンチ用」となっています(セメダイン CL-7N 製品情報)。
やりがちなのは、座るための床置きクッションの補修用接着剤と混同してしまうことです。座布団型のクッションの破れ補修と、床に貼るシート床材の接着はまったく別の話なので、この記事では床材用だけを扱います。
探すときのコツは、パッケージの用途欄にクッションフロアの文字があるかを最初に見ることです。木工用や多用途の接着剤は、床材メーカーの施工資料に出てこないため、床一面を貼る用途では候補から外して考えるのが無難です。
接着剤は水性2系統と溶剤形2系統に分かれる
クッションフロアに使う接着剤は、サンゲツの施工要領書で大きく4つの系統が名前で指定されています。水性側がゴム系ラテックス形とアクリル樹脂系エマルション形、溶剤形側がウレタン樹脂系溶剤形とエポキシ樹脂系溶剤形です(サンゲツ クッションフロア施工要領書)。
なぜ2つに分かれるかというと、乾き方が違うからです。水性の接着剤は含まれる水分が下地に吸われたり蒸発したりして固まります。水を吸える下地なら水分の逃げ道がありますが、鉄板や既存の床の上のように水を吸わない下地では逃げ道が限られます。そうした下地向けに、溶剤形の系統が指定されているわけです。
失敗しやすいのは、この区別を知らずに手元にある接着剤を使い回すことです。下地に合わない系統を選ぶと、乾くまでの時間が読めなくなったり、密着が弱くなったりする原因になります。
缶やボトルのラベルには主成分や形式(ラテックス形・エマルション形など)が書かれています。系統名を一度覚えておくと、商品名が変わっても同じ物差しで選べます。
ラテックス形・エマルション形=水を媒体にした水性の接着剤。水分が抜けて固まる。
溶剤形=有機溶剤を媒体にした接着剤。換気が欠かせない。
ピールアップ形=あとで床材を剥がすことを前提にした接着剤。
くし目ごて=接着剤を均一な筋状に広げるための、ギザギザの刃がついたこて。床材メーカーが指定するものを使う。
床用接着剤には JIS A 5536 という規格がある
床材用の接着剤には、JIS A 5536(床仕上げ材用接着剤)という日本産業規格があります。セメダインの CL-7N は製品情報の規格欄に JIS A 5536 と記載しています(セメダイン CL-7N)。
規格がある意味は、床に使う接着剤として求められる性能の物差しが共通化されている点にあります。2003年版の正誤票では、適用床材の表示に関わる箇所で「JIS A 5705,JIS L 4406,JAS に規定する床材,リノリウム系床材及びゴム系床材」という記載が確認できます(JIS A 5536 正誤票(日本規格協会))。JIS A 5705 はビニル系床材、JIS L 4406 はタイルカーペットの規格です。
現行版は JIS A 5536:2015 で、2025年10月20日に確認(内容の変更なし)されています(日本規格協会 JIS A 5536:2015)。上の正誤票は2003年版に対するものです。
実務上のコツは、JIS表記の有無を、床材に使えるかどうかの一つの手がかりとして見ることです。表記がない製品が使えないという意味ではありませんが、床材メーカーの施工資料にある系統名と、接着剤側の規格表記の両方を確かめると判断の根拠が増えます。
下地を見れば系統が決まる|合板・コンクリート・重ね貼りの分かれ道
合板やモルタルなど水を吸う下地は水性系
モルタルのように水を吸う下地(施工要領書では「吸収性のある下地(モルタルが多い)」)では、サンゲツの施工要領書は「ゴム系ラテックス形、またはアクリル樹脂系エマルション形接着剤を指定の」くし目ごてで使うよう示しています(サンゲツ 施工要領書)。対象は水分グレードⅠ、つまり D.MODE440未満の下地です。
理由は前の章で触れたとおり、水性の接着剤は下地に水分を逃がしながら固まるからです。吸水性のある下地はその水分を受け止められるため、水性系との相性がよいわけです。
家でやるDIYで多いのは、古い床材を剥がしたあとの合板の上に貼るケースです。このとき、剥がした床材の糊や紙が残っていると、合板が本来の吸水性を発揮できず、乾きにむらが出ることがあります。
貼る前に、下地が素地の状態か、塗装や古い糊で覆われていないかを確かめましょう。合板の種類や耐水性の違いは、別記事で詳しく整理しています。

湿気が多い下地は耐湿工法になる
同じ吸水する下地でも、湿気が多い場合は扱いが変わります。サンゲツの施工要領書では水分グレードⅡa(D.MODE440以上620未満)の下地について、「ウレタン樹脂系溶剤形、またはエポキシ樹脂系溶剤形接着剤を使用して耐湿工法で施工する。」としています(サンゲツ 施工要領書)。
施工要領書は理由までは書いていませんが、東リのカタログはアクリル樹脂系エマルション形の接着剤について「耐水性、耐アルカリ性に乏しいので、湿気のおそれのあるモルタル床では使用不可。」と注意しています(東リ カタログ)。湿気の多い下地で耐湿工法として溶剤形の系統が指定されているのは、この弱点を避けるためと読めます。
やりがちなのは、新しく打ったモルタルや、地面に近い土間コンクリートを見た目だけで乾いていると判断することです。表面が乾いて見えても内部に水分が残っている場合があり、施工要領書が水分グレードで分けているのはそのためです。
下地の水分を測る機器を持っていない場合は、湿気が疑われる下地ほど自己判断を避け、床材メーカーの施工要領書の区分に沿って判断するのが安全です。
既存の床への重ね貼りは溶剤形の領域
古いクッションフロアやフローリングの上に新しいクッションフロアを重ねる場合、下地は水を吸いません。サンゲツの施工要領書は、鉄板・重ね貼り・石・塗床などの非吸水性下地について「ウレタン樹脂系溶剤形、またはエポキシ樹脂系溶剤形接着剤を指定のくし目ごてを用いて使用する。」と示しています(サンゲツ 施工要領書)。
重ね貼りで水性系を選ぶと、水分の逃げ道が床材側にしかなくなります。クッションフロアも水を通しにくいため、上下を水を通さない層に挟まれた接着剤は乾きにくくなり、密着が安定しにくくなります。
トイレや洗面所でよくあるのが、既存のクッションフロアを剥がさずにそのまま上から貼るケースです。手軽に見えますが、接着剤の系統が変わる点を見落としやすい場面です。
溶剤形を使う場合は、換気の確保と保護具の準備が前提になります。東リのカタログでは、USセメントなど溶剤形の接着剤すべてに「火気厳禁」と表示され、施工後のガス抜き作業も指示されています(東リ カタログ)。作業中と乾くまでは火の気を遠ざけ、製品ラベルとSDSの注意事項を作業前に一読しておきましょう。
| 項目 | 吸収性下地(水分グレードⅠ) | 湿気の多い下地(水分グレードⅡa) | 非吸水性下地 |
|---|---|---|---|
| 目安 | D.MODE440未満 | D.MODE440以上620未満 | 鉄板・重ね貼り・石・塗床など |
| 接着剤の系統 | ゴム系ラテックス形/アクリル樹脂系エマルション形 | ウレタン樹脂系溶剤形/エポキシ樹脂系溶剤形(耐湿工法) | ウレタン樹脂系溶剤形/エポキシ樹脂系溶剤形 |
| 注意点 | 古い糊や塗装が残ると吸水性が落ちる | 見た目が乾いていても内部に水分が残ることがある | 換気・保護具が前提。湿気による膨れに注意 |
CL-7N・EM341・東リの公式値を並べると何が違う?

CL-7Nは初期接着力と弾性のある皮膜が特長
セメダインの CL-7N(クッションフロアー用)は、メーカー公式の主成分表記が合成ゴム系接着剤で、外観は乳白色の水性液体です。特長として「初期接着力に優れる」ことと、「被着皮膜に弾性があり、振動や衝撃に強い」ことが挙げられています(セメダイン CL-7N 製品情報)。
初期接着力が強いということは、貼ってすぐの段階で床材が位置からずれにくいということです。また、固まった後の皮膜に弾性があると、人が歩いたり物を置いたりして床に繰り返し力がかかっても、接着層が追従しやすくなります。
なお、セメダインの家庭用Q&Aでは、CL-7N はコンクリートのほか木材にも使えるが、金属のように水を吸わない下地では硬化に時間がかかるとされています。水性の接着剤が下地の吸水性を前提にしていることが、ここからも読み取れます。
容量は1kg(品番 LX-121)と3kg(品番 LX-122)の2種類です。購入時は品番で確認すると取り違えを防げます。
| 種類・方式 | 合成ゴム系接着剤(乳白色水性液体)/JIS A 5536 |
| 主な仕様 | 粘度(23℃) 40Pa・s/密度 1.2g/cm3/張り合せ可能時間 10~30分(23℃)/標準塗布量 250~350g/m2 |
| 向いている作業・材料 | クッションフロア、カーペット、ニードルパンチ用 |
| 使い方のコツ・注意 | 換気の良い場所で使用し、保護手袋・保護眼鏡などを着用。凍結・直射日光を避け、5℃~35℃の屋内で密閉保管 |
床用EM341は剥がす前提のピールアップ用
セメダインの床用EM341は、主成分がアクリル樹脂系エマルション形接着剤で、「ピールアップ用」と明記された水性タイプです。製品情報では「糊跡が残りにくい」ことが特長として挙げられ、用途はタイルカーペット、クッションフロア用です(セメダイン 床用EM341 製品情報)。
ピールアップ用の接着剤は、将来の張り替えや原状回復を見越して、剥がしやすさとのバランスを取っている点が CL-7N との大きな違いです。初期接着力や弾性を前面に出す CL-7N に対し、EM341 は剥がすときの扱いやすさに軸足があります。
標準塗布量は200~300g/m2で、CL-7N の250~350g/m2より範囲が下にずれています。同じ広さに塗る場合でも、製品によって必要な量の目安が変わるということです。
容量は600g(品番 AE-137)と18kg(品番 AE-187)です。また、EM341 の製品ページには張り合わせ可能時間の記載がありません。時間の管理はラベルの表示と、床材メーカーの施工要領書に沿って行ってください。
東リのエコAR600は東リ製品専用
床材メーカーの東リは、総合カタログ(2025-2026)の下地別接着剤早見表で、クッションフロアを乾燥した下地に貼る接着剤としてエコロイヤルセメントとエコAR600を挙げています。エコAR600はアクリル樹脂系エマルション形の「ビニル床材用汎用接着剤」で、標準手配量は0.30kg/m2、缶の容量は大15kg・中9kg・小3kg・パック1kgです(東リ カタログ 接着剤ページ)。カタログには「耐水性、耐アルカリ性に乏しいので、湿気のおそれのあるモルタル床では使用不可。」とも書かれています。なお、同じ東リのピールアップ形エコGAセメントは、適用製品がタイルカーペットや置敷きビニル床タイルで、クッションフロア用には挙がっていません。
ここで押さえておきたいのは、カタログに「※東リ接着剤は東リ製品専用です。東リ製品以外でのご使用には品質保証いたしかねます。」と書かれている点です(東リ カタログ)。
床材メーカーの接着剤は、自社の床材との組み合わせで品質を確認しています。つまり、他社の床材に使った場合は、その組み合わせでの品質保証の対象外になります。
手に入れた床材が東リ製品なら東リの接着剤を、サンゲツ製品ならサンゲツの施工要領書が指定する系統を選ぶというように、床材のメーカー名から接着剤を逆引きすると迷いが減ります。
工具・DIYの教科書調べ|3製品の公式値を同じ表で比べる
3製品の公式値を同じ物差しで並べると、選ぶときの論点がはっきりします。以下は、セメダインの製品情報と東リのカタログに記載のある項目だけを並べた表です(記載のない項目は空欄ではなく記載なしと明記しています)。
| 項目 | セメダイン CL-7N | セメダイン 床用EM341 | 東リ エコAR600 |
|---|---|---|---|
| 系統 | 合成ゴム系 | アクリル樹脂系エマルション形(ピールアップ用) | アクリル樹脂系エマルション形(ビニル床材用汎用) |
| 塗布量の目安 | 250~350g/m2 | 200~300g/m2 | 0.30kg/m2(標準手配量) |
| 時間の目安 | 張り合せ可能時間 10~30分(23℃) | 製品ページに記載なし | 待ち時間 10~20分・貼付可能時間 10~60分(採用時の目安) |
| 容量 | 1kg・3kg | 600g・18kg | 15kg・9kg・3kg・1kg |
| 備考 | JIS A 5536 表記あり | 糊跡が残りにくい | 東リ製品専用 |
表から読み取れるのは、塗布量の単位がメーカーで違うこと(g/m2 と kg/m2)と、時間の考え方もメーカーで違うことです。製品をまたいで数値を当てはめず、使う製品のラベルと資料の値で管理してください。
賃貸で剥がせる?ピールアップ形と強力接着の境目
剥がす予定があるならピールアップ形から考える
退去時に元の床に戻す必要がある賃貸では、接着剤の選び方の前提が変わります。強く長く密着することより、剥がすときに下地を傷めにくいことが優先になるからです。その目的で作られているのが、セメダインの床用EM341のようなピールアップ形です(東リのピールアップ形エコGAセメントは、カタログ上の適用製品がタイルカーペットや置敷きビニル床タイルで、クッションフロアは挙がっていません)。
EM341 の製品情報には「糊跡が残りにくい」と書かれています(セメダイン 床用EM341)。ここで注意したいのは、メーカーの表現は残りにくいであって、残らないではない点です。下地の材質や状態によって剥がしたあとの状態は変わります。
やりがちなのは、剥がせると書いてあるから何でも原状回復できると思い込むことです。既存の床材そのものが傷んでいたり、表面にワックスが重なっていたりすると、結果が変わる余地があります。
賃貸では、そもそも床に接着剤を使ってよいかを貸主や管理会社に確認するのが先です。原状回復の考え方は、壁への取り付けと同じく事前の確認がものを言います。

賃貸の部屋に棚をつけたい。でも壁に穴をあけたら、退去のときに何か言われるかもしれない。そう考えて、棚を買う前の段階で手が止まっている人もいると思います。ネットで…
ずっと使う床なら初期接着力と弾性を重視する
持ち家で張り替えたあとも長く使う床なら、剥がしやすさより密着の安定を優先する選び方になります。CL-7N のように初期接着力と弾性のある皮膜を特長に掲げる製品は、この考え方に沿った選択肢です。
理由は、床には人の歩行や家具の荷重、キャスター付きの椅子の移動など、繰り返しの力がかかるからです。皮膜に弾性があると、こうした振動や衝撃に接着層が追従しやすく、端部からのめくれにつながりにくくなります。
注意したいのは、強く付く接着剤ほど将来の張り替えで剥がす手間が増えるという裏返しです。数年後に別の床材にする可能性があるなら、その時の作業も含めて選んでおくと後悔が減ります。
どちらを選ぶ場合も、吸水性下地なら水性系という系統の原則は変わりません。CL-7N も EM341 も水性で、重ね貼りのような非吸水性下地に使う系統ではない点をあわせて押さえておきましょう。
実は接着剤は床材のメーカーから逆引きするのが近道
実は、接着剤選びで見落とされやすいのが、床材メーカーが接着剤を指定しているという事実です。東リはカタログで自社の接着剤を東リ製品専用とし、下地別接着剤早見表で床材ごとの接着剤を指定しています。サンゲツは施工要領書で下地ごとに接着剤の系統を指定しています(東リ カタログ 下地別接着剤早見表)。
売り場では接着剤の棚と床材の棚が別々にあるため、接着剤の比較から入ってしまいがちです。けれども床材の品質保証や施工方法は床材メーカー側が決めているので、床材の品番と施工資料から接着剤の条件を読むほうが筋がよいのです。
よくある失敗は、安さや容量で接着剤を先に決め、あとで床材の施工資料に別の系統が指定されていたと気づくパターンです。
床材を買うときに、品番とメーカー名を控えておきましょう。メーカーの施工要領書やカタログの接着剤ページを先に見れば、選ぶべき系統と注意点が一度にわかります。
貼る前の準備で仕上がりの半分が決まる理由
ほこり一つで接着剤の効きが落ちる
接着剤の性能を引き出すには、貼る前の下地の清掃が欠かせません。サンゲツの施工要領書には「床の汚れ・ゴミ・ほこりなどは接着剤の効力を弱めクレームの原因に繋がるため、清掃にて確」実に取り除くよう書かれています(サンゲツ 施工要領書)。
仕組みとしては、接着剤は下地の表面に密着してはじめて力を発揮します。間にほこりや細かいごみが挟まると、接着剤はそのごみに付くだけで下地に届きません。そこが点状の弱い部分になり、浮きの起点になります。
また、薄いシート床材であるクッションフロアは、下地の小さな凹凸やごみを表面に拾いやすい性質があります。貼ったあとに小さな出っ張りが見えるのは、多くの場合この段階の取り残しです。
掃除機をかけたあと、固く絞った雑巾などで仕上げ、乾いてから接着剤を塗る流れにすると、ごみと水分の両方を残しにくくなります。
原因:剥がした床材の糊の粒や紙片、ほこりが下地に残ったまま接着剤を塗ると、接着剤が下地に届かず点状の浮きになります。
対策:剥がした直後に掃除機と拭き掃除で下地を整え、乾いてから塗布に入ります。サンゲツの施工要領書も、汚れ・ゴミ・ほこりが接着剤の効力を弱めるとしています。
仮敷きと裁断を先に済ませるのはなぜか
サンゲツの施工工程図では、作業の流れが仮敷き→裁断→接着剤の塗布→貼り付け→継ぎ目処理→圧着・養生の順になっています(サンゲツ 施工要領書)。接着剤を塗るのは、床材を部屋の形に合わせ終わってからです。
この順番には理由があります。接着剤には塗ってから貼るまでに使える時間の上限があるため、塗ってから寸法合わせをしていると、その時間を使い切ってしまうからです。先に形を決めておけば、塗布から貼り付けまでを短い時間でまとめられます。
やりがちなのは、壁際の切り込みを貼りながら合わせようとすることです。切っている間に接着剤の状態が変わり、場所によって付き方がばらつく原因になります。
仮敷きの段階で、床材を部屋に広げてなじませ、壁際や柱まわりの裁断を終えてから接着剤の準備に入りましょう。
部屋の長さで折り返し方を変える
裁断を終えた床材に接着剤を塗るときは、床材をめくって下地を出す必要があります。サンゲツの施工要領書では、長さ方向が5m未満の室内は観音開き、5m以上の広い部屋は胴めくりという折り返し方が示されています(サンゲツ 施工要領書)。
観音開きは、床材を中央から両側へ半分ずつ折り返して塗る方法です。半分ずつ作業できるため、仮敷きで決めた位置を動かさずに塗布と貼り付けを進められます。広い部屋では一度にめくる量が多くなり扱いにくくなるため、別の折り返し方が指定されているわけです。
家でやるDIYで多いトイレや洗面所は、長さ方向が短い部屋がほとんどなので、観音開きの考え方が当てはまりやすい場面です。
折り返すときは、仮敷きした位置がずれないよう、床材の一部に位置の目印を付けておくと戻すときに迷いません。
塗布から圧着まで|待ち時間と貼り付け可能時間の読み方
塗布量は製品の標準値と温湿度で決まる
接着剤は多く塗れば強くなるものではありません。製品ごとに標準塗布量が決まっていて、CL-7N は250~350g/m2、床用EM341 は200~300g/m2と公式に示されています(セメダイン CL-7N)。
サンゲツの施工要領書は、塗布量は施工時の温湿度で決めるものとしています。温度や湿度で接着剤の乾き方が変わるため、同じ量を塗っても季節によって状態が違ってくるからです。標準塗布量の幅は、こうした条件の違いを吸収するためのものと読むとよいでしょう。
やりがちなのは、くし目ごての代わりにヘラやローラーで薄く伸ばしてしまうことです。施工要領書が指定のくし目ごてを使うよう求めているのは、塗る量を均一にそろえるためです。
必要な量の目安は、貼る広さに製品の標準塗布量をかけると出せます。缶の容量と見比べて、途中で足りなくならないよう少し余裕を持って準備しましょう。
待ち時間は製品の目安と現場の状態で見る
塗ってすぐ貼るのではなく、接着剤によっては貼るまでに待つ時間があります。東リのカタログ(2025-2026)では、エコAR600の待ち時間(接着剤塗布後の時間)は10~20分、貼付可能時間は10~60分が採用時の目安とされています(東リ カタログ)。
この数字は固定値ではありません。カタログには「※標準手配量・待ち時間・貼付可能時間は、ご採用時にあたっての目安としてご覧下さい。現場環境(下地・気温・湿度・通風等)により変化します。」と書かれ、記載時間は繊維強化板下地を基準にしているとも注記されています(東リ カタログ)。
時計だけで判断せず、使う製品のラベルの目安と、その日の気温・湿度を合わせて見るのがコツです。サンゲツの施工要領書も、オープンタイムや貼り付け可能時間は温度・湿度に大きく左右されるとしています。
貼り付け可能時間を過ぎると接着不良になる
待ち時間と対になるのが、貼り付けられる時間の上限です。セメダイン CL-7N の張り合せ可能時間は10~30分(23℃)とされています(セメダイン CL-7N)。サンゲツの施工要領書には「貼り付け可能時間を超えた場合、接着不良の原因となるため注意を要する。」とあります(サンゲツ 施工要領書)。
上限がある理由は、接着剤の表面が乾き進むと、床材の裏側をぬらす力が落ちるからです。表面が乾いた接着剤に床材を載せても、接着剤が床材に食いつかず、見た目は貼れていても力がかかると剥がれます。
施工要領書によれば、オープンタイム・貼り付け可能時間・圧着可能時間は温度・湿度に大きく左右されます。23℃という条件つきの値は、暑い日には短く、寒い日には長くなる方向に動くと考えておくのが安全です。
原因:一度に広く塗ると、最初に塗った場所が貼り付け可能時間を過ぎ、表面が乾いた接着剤の上に床材を載せることになります。見た目は貼れていても密着せず、後から浮きやはがれになります。
対策:観音開きで半分ずつ塗り、ラベルの時間内に貼れる範囲に区切ります。暑い日は乾きが早まる前提で、塗る範囲をさらに小さくします。
圧着とエア抜きは目地の方向へ押し出す
貼り付けたら、床材と接着剤をしっかり密着させる圧着とエア抜きに進みます。サンゲツの施工要領書では、しごき板で目地の方向に空気を押し出し、小さな空気だまりも見逃さず取り除くよう示されています(サンゲツ 施工要領書)。
押し出す方向が決まっているのは、空気の出口を確保するためです。床材の中央から端へ、継ぎ目のほうへ順に押していけば、空気は逃げ場に向かって動きます。逆に端から中央に向かって押すと、空気が中央に集まって閉じ込められます。
継ぎ目がある場合は、シームシーラーで継ぎ目を処理し、はみ出したシーム液はすぐに拭き取るよう施工要領書に書かれています。
膨れ・浮き・はがれはなぜ起きる?原因と防ぎ方
小さな空気だまりが湿気で膨れに育つ
貼った直後はきれいでも、しばらくして床に膨らみが出てくることがあります。サンゲツの施工要領書は「空気だまりは下地の湿気の影響を受けて膨れの原因になりやすいため、小さなものでも見逃」さずに取り除くよう求めています(サンゲツ 施工要領書)。
仕組みとしては、空気だまりの部分は接着剤が床材に付いていないため、下地から上がってくる湿気の逃げ場になります。湿気が集まると、その部分が押し上げられて膨れが大きくなっていきます。貼った直後には目立たない小さなすき間が、時間とともに育つわけです。
見落としやすいのは、部屋の隅や便器まわりなど、しごき板が入りにくい場所です。押し出しが不十分なまま空気が残りやすく、膨れの起点になりがちです。
圧着の最後に、床材の表面を手のひらで軽くなでて、浮いた感触の場所がないかを確かめると取り残しに気づきやすくなります。
原因:貼った直後の小さな空気だまりは、下地の湿気が集まる逃げ場になり、時間とともに膨れへ育ちます。
対策:しごき板で中央から目地の方向へ押し出し、隅や便器まわりは特に念入りに。仕上げに手のひらで浮きの感触を確かめます。
溶剤形は目地の少ない床で膨れやすい
重ね貼りや湿気の多い下地で使う溶剤形の接着剤には、膨れについて別の注意があります。サンゲツの施工要領書では、目地が少なく下地の湿気が抜けにくい床では、溶剤と湿気の反応ガスが抜けず、膨れの原因になりやすいとされています(サンゲツ 施工要領書)。
シート床材は継ぎ目が少ないぶん、下から上がってくるガスや湿気の出口も少なくなります。逃げ場のないガスは床材を押し上げるため、溶剤形でも条件次第で膨れが起きるわけです。
見落としやすいのは、溶剤形なら湿気に強いから安心と考えてしまうことです。系統の選び分けは膨れを防ぐ条件の一つにすぎず、下地の湿気そのものが多い場合は、施工の可否も含めて判断が必要になります。
溶剤形を使う場面では、換気を確保したうえで、空気だまりを残さない圧着をより丁寧に行うことが対策の中心になります。
乾燥固化まではキャスターと重量物を避ける
貼り終えたあとの養生も、浮きやはがれを防ぐうえで欠かせません。サンゲツの施工要領書は「接着剤が完全に乾燥固化するまでは突き上げ・目すき・膨れなどを発生させる恐れがあるので」、重量物などのキャスターによるしごきを避けるよう求めています(サンゲツ 施工要領書)。
乾燥固化前の接着剤はまだ柔らかく、上から強い力でこすられると床材ごと動きます。キャスターが通ると床材が押し出され、継ぎ目が開く目すきや、押し寄せた部分の突き上げにつながります。
やりがちなのは、貼り終えた当日に洗濯機や家具を戻し、キャスター付きの台で運ぶことです。見た目は問題なくても、後日の浮きの原因を作っていることがあります。
養生中に床材をテープで留める場合は、施工要領書が示すように、床面を汚染・変質させにくいアクリル系粘着テープを選びます。テープの粘着剤で床材の表面を傷めないための配慮です。
シーンで選ぶ|賃貸・持ち家・重ね貼りの使い分け
ここまでの内容を、読者の状況ごとに整理します。根拠はいずれもセメダインの製品情報とサンゲツ・東リの資料です。
賃貸で合板などの床に貼る人は、まず貼ってよいかを確認し、そのうえで床用EM341 のようなピールアップ形から検討します。持ち家で長く使う床を張り替える人は、吸水性下地なら CL-7N のように初期接着力と弾性を特長とする水性系が候補になります。既存の床の上に重ね貼りする人は、非吸水性下地としてウレタン樹脂系またはエポキシ樹脂系の溶剤形の領域です。床材を先に買った人は、その床材メーカーの指定から逆引きするのが確実です。
水性の CL-7N でも、セメダインは製品情報の安全取扱注意事項に「屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。」「保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。」と記載し、皮膚に付いた場合は多量の水と石けんで洗い、皮膚刺激や発しんが出たら医師の診察を受けるよう案内しています(セメダイン CL-7N)。余った接着剤は「皮張り防止のため、使用後は密閉して貯蔵すること。」とされ、凍結や直射日光を避けて5℃~35℃の屋内で保管します。
接着剤選びで迷ったときの考え方は、家具の剥がれ補修でも共通する部分があります。接着する面の材質から考える習慣を身につけておくと、ほかのDIYでも役立ちます。

ダイニングテーブルの角や天板のふちが、ペロッとめくれてきた。ふちの帯のような部分が浮いて、袖や布巾に引っかかる。買い替えるほどではないけれど、このままにしておく…
まとめ|フロアクッション接着剤は下地と貼り直しの予定で選ぶ
最初の一歩として、貼る予定の床が合板やモルタルなのか、既存の床材の上なのかを確かめ、床材のメーカー名と品番を控えてから、そのメーカーの施工資料で接着剤の系統を確認してみてください。
※製品の仕様や品番は変更されることがあります。最新情報は各メーカーの公式サイトでご確認ください。

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