アングルや鉄パイプ、ボルトの余りを短くしたいときに、まず思い浮かぶ道具がディスクグラインダーです。ホームセンターで砥石を買って付ければすぐ切れそうに見えます。でも、どの砥石を付けるか、どう当てるか、どこに立つかで、仕上がりも安全性も変わります。
先に結論をお伝えすると、グラインダーで金属を切るときは、切断用の砥石を、切断砥石専用のホイールカバーとフランジで取り付け、押し込まずにゆっくり前へ進めるのが基本です。これはマキタやHiKOKIの取扱説明書に共通して書かれている内容で、理屈を知ると「なぜそうするのか」が腹に落ちます。
この記事では、メーカー公式の取扱説明書、砥石メーカーのカタログ、労働安全衛生規則の条文を一次情報にして、砥石の選び方・切る前の準備・切断の手順・キックバックが起きる仕組み・やってはいけない動作を、順番に整理していきます。
・切断砥石と研削用・オフセット砥石の違い、チップソーを付けてはいけない理由
・砥石の表示(寸法・使用周速度の上限)の読み方と、試運転1分・3分の根拠
・メーカー取扱説明書に沿った切断の進め方と、切込み量の目安
・キックバックを避ける体の位置と、側面使用・斜め切りなどのNG動作
なぜ「切断砥石」でないと金属を切ってはいけないのか

切断砥石と研削用のオフセット砥石は、役割が別物
グラインダーの先端工具は、大きく分けると「削るための砥石」と「切るための砥石」があります。結論から言うと、金属を切るなら切断砥石を使うのが取扱説明書のルールです。マキタの125mmモデル9015B・150mmモデル9016Bの取扱説明書でも、砥石を用いて切断作業をする場合は切断砥石を使うよう案内されています。
理由は形と使い方の違いにあります。研削用のオフセット砥石は、円盤の外周寄りの面を材料に当てて表面を削ることを前提に作られています。一方の切断砥石は薄い円盤で、外周の縁を材料に食い込ませて溝を掘り進めることを前提にしています。用途が違えば、砥石にかかる力の向きも違います。
やりがちなのが、手元にある厚い研削用砥石で鉄筋やボルトを切ろうとするケースです。切れないわけではなさそうに見えても、取扱説明書では切断砥石以外の砥石での切断作業はしないよう明記されています。マキタ100mmディスクグラインダ9553Bの取扱説明書でも同じ注意が書かれています。
見分けるコツは、砥石のラベルや箱に「切断用」と書かれているかどうか。迷ったら付けずに、パッケージの用途表示を確認してから使いましょう。
切断砥石専用のホイールカバーとフランジが要る理由
切断砥石を付けるときは、切断砥石専用のホイールカバーとフランジに付け替える必要があります。ここを見落とす人が多いポイントです。
マキタ9015B/9016Bの取扱説明書では、切断砥石を使用する場合は切断砥石専用のホイールカバー、フランジを取り付けるよう案内され、その目的は砥石が破壊したときのけが防止とされています。HiKOKIの100mmモデルFG 10SS2の取扱説明書でも、切断トイシを使うときは別売部品のホイルガード【切断トイシ用】とホイルナット【切断用】を取り付けるよう書かれています。
つまり、グラインダー本体を買ったときに付いてくるカバーは研削用が前提で、切断にはそのままでは対応していない機種があるということです。マキタ9553Bの取扱説明書では、切断砥石そのものが「別販売品の使い方」の欄で説明されており、「切断砥石を使用する場合は必ず切断砥石用のホイールカバー、インナフランジ、ロックナットとベースを取り付けてください。」(帰結は「切断砥石が破損したとき、事故の原因になります。」)という警告とあわせて、切断砥石用のホイールカバーなどが部品番号つきで載っています。
確認するなら、取扱説明書の別販売品の欄を開いてみてください。手持ちの機種に対応する切断用の部品名と部品番号が載っています。部品をそろえてから作業を始めるのが近道です。
丸のこ刃やチップソーを付けてはいけない理由
「木工用のチップソーを付ければ早く切れるのでは」と考える人もいますが、グラインダーに丸のこ刃やチップソーを付けるのは取扱説明書で禁止されています。
マキタ9015B/9016Bの取扱説明書では、用途以外の刃物(丸のこ刃、チップソーなど)での切断作業はしないよう書かれ、その理由として丸のことしての保護装置がなく、けがの原因になることが挙げられています。宮城県が公開しているグラインダー災害の資料では、さらに理屈が説明されています。丸ノコは手を離せば止まる構造が一般的なのに対し、グラインダーはスイッチ式なので、手を離れても回り続けて機械が暴れ、けがが重くなるという指摘です。
同じ資料には、砥石をチップソーに替えて型枠を切断中に刃が引っかかり、手を滑らせて左手指を損傷した事例(重傷)が載っています。全国の事例として、高さ1.6mの足場上で鉄製軽量下地をハンドグラインダーで切断中に工具が跳ね返り、首の頚動脈を切断して亡くなった災害も紹介されています(こちらは使っていた先端工具の種類が書かれていません)。
チップソー自体の構造や、丸ノコでの正しい付け方を知りたい方は、こちらで解説しています。

丸ノコについて調べ始めると、刃の名前として当たり前のように出てくるのが「チップソー」です。替え刃のパッケージにも「木工用チップソー」「刃数20」といった表示が並…
| 項目 | 切断砥石 | オフセット砥石(研削用) | 丸のこ刃・チップソー |
|---|---|---|---|
| しくみ | 薄い円盤の縁で溝を掘り進める | 面を当てて表面を削る | 刃先で材料を削り取る(丸ノコ用) |
| グラインダーでの切断 | 専用カバー・フランジを付けて使う | 切断には使わない | 取扱説明書で禁止 |
| 注意点 | 側面使用・こじり・斜め切りをしない | 切断に流用しない | 保護装置がなく、手を離れても回り続ける |

切断砥石のラベルはどこを見る?寸法と「使用周速度の上限」の読み方
「105×1.0×15mm」は外径・厚さ・穴径の並び
切断砥石の箱やラベルに書かれた数字は、外径×厚さ×穴径の順に並んでいるのが基本です。ここが読めると、手持ちのグラインダーに合うかどうかを判断できます。
砥石メーカーのノリタケのカタログでは、切断砥石「スーパーリトル」シリーズとして、105×0.8×15mm、105×1.0×15mm、105×1.5×15mm、105×2.3×15mmの4種が並んでいます。外径と穴径は同じで、厚さだけが違う構成です。
厚さが違うと、切ったときに削り取られる幅(切り代)も変わります。どの厚さをどの材料に使うかはメーカーごとの用途表示に従うのが確実で、1社の分類を一般化しないほうが安全です。やりがちなのは、外径だけを見て「100mmのグラインダーに付く」と判断し、穴径や対応する部品を確認しないケース。HiKOKI FG 10SS2の切断用別売部品は外径100 mm仕様と明記されているように、機種ごとに対応する砥石の範囲が決まっています。
コツは、砥石のラベルとグラインダーの取扱説明書を並べて見ること。外径・穴径・対応部品の3点が合っているかを確認してから買いましょう。
使用周速度の上限は、砥石が耐えられる回転の限界
ラベルにある「m/s」の数字は、その砥石を安全に使える周速度の上限です。ノリタケの技術資料では、最高使用周速度を安全に使用できる最高限度の周速度/回転速度と定義しています。スーパーリトルの4種はいずれも80 m/sと記載されています。
周速度とは、砥石の外周が1秒間に進む距離のことです。同じ回転数でも、外径が大きいほど外周は速く動きます。ノリタケの技術資料では、最高使用周速度を超えて使用すると研削砥石が破壊する危険性があると説明されています。だから砥石側に上限が表示されているわけです。
単位が違う表示にも注意が要ります。マキタ9015B/9016Bの取扱説明書では、オフセット砥石について4,300m/min以上の正規の砥石を使うよう書かれています。こちらは1分あたりの距離で、60で割るとm/sになります。マキタ9553BやHiKOKI FG 10SS2の取扱説明書では、同じ条件が「72 m/s(4,300 m/min)」と両方の単位で併記されています。
労働安全衛生規則の第119条でも、研削といしを上限の周速度をこえて使ってはならないと定められています(事業者向けの規定)。取扱説明書の指定とラベルの表示、両方を見る習慣をつけましょう。
砥石は「ころがすな・落とすな・ぶつけるな」で保管する
切断砥石は消耗品ですが、保管と扱い方で安全性が変わる道具でもあります。ノリタケのカタログには、砥石の取り扱いはころがすな・落とすな・ぶつけるなという原則が書かれています。
ノリタケのカタログはこれらの注意の冒頭に、「誤った使い方をした場合、砥石が破壊して死亡または重傷をまねく恐れがあります。」という警告を掲げています。ノリタケのカタログでは、落としたりぶつけたりした砥石や、検査で異常があった砥石は使わないよう案内されています。
家でやりがちなのは、工具箱の底に砥石を裸で放り込み、レンチやビスと一緒にガチャガチャ持ち運ぶパターンです。気づかないうちに縁が欠けたり、湿気を吸ったりします。同じカタログでは、保管は整理棚などの乾燥した場所でおこなうよう書かれています。
コツは、買ったときの箱に戻して平らに置いておくこと。グラインダー本体を落としたりぶつけたりしたときも、マキタの取扱説明書では砥石や機体に破損・亀裂・変形がないかよく点検するよう案内されています。
| 項目 | マキタ 9553B | マキタ 9015B/9016B | HiKOKI FG 10SS2 |
|---|---|---|---|
| 砥石の径 | 100mm | 125mm/150mm | 100 mm |
| 切断時に必要な部品 | 専用ホイールカバー・インナフランジ・ロックナット・ベース(別販売品) | 切断砥石専用のホイールカバー・フランジ | ホイルガード【切断トイシ用】・ホイルナット【切断用】(別売) |
| 水・研削液 | 使用しない | 乾式用のため使用しない | かけて使用しない |
| 切込み量の記載 | こじる・強く押し過ぎるのは禁止 | ― | 1回の切込み量は5 mm以下 |
| 丸のこ刃・チップソー | 使用しない | 切断作業をしない(保護装置がない) | ― |
※各社の取扱説明書の記載をもとに編集部で整理。「―」は該当する記載を本表では取り上げていない項目です。
切る前の準備で8割決まる:点検・試運転・固定・保護具

取り付ける前に、ひびと打音を確かめる
砥石を付ける前の点検は、見た目のひび・われ・かけと、たたいたときの音の2つで確かめます。ノリタケのカタログでは、機械へ取り付ける前に外観検査と打音検査をするよう案内されています。
打音検査とは、砥石を軽くたたいて音を聞く方法です。健全な砥石は澄んだ音がしやすく、内部にひびがあると濁った音になりやすいとされています。目に見えないひびを見つける手がかりになるわけです。マキタ9015B/9016Bの取扱説明書でも、砥石にヒビや割れなどの異常がないことを確認してから使うよう書かれています。
やりがちな失敗は、前回の作業で途中まで使った砥石を、そのまま点検なしで回し始めることです。前回の作業中にこじったり、置いたときにぶつけたりしていれば、縁が欠けている可能性があります。
コツは、砥石を交換するたびと、その日の作業を始めるたびに点検を入れること。数十秒で済む確認ですが、割れた砥石を回さないための大事な一手です。砥石の交換手順やナットの向きは、こちらで詳しく解説しています。

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試運転は作業始めに1分、交換後に3分
砥石を付けたら、いきなり材料に当てずに空回しの試運転をします。時間の目安は、その日の作業始めに1分間以上、砥石を取り替えたときに3分間以上です。
この時間は、マキタ9015B/9016Bの取扱説明書、ノリタケのカタログ、そして労働安全衛生規則の3つで一致しています。労働安全衛生規則(e-Gov法令検索)の第118条には、「事業者は、研削といしについては、その日の作業を開始する前には一分間以上、研削といしを取り替えたときには三分間以上試運転をしなければならない。」と定められています。
取扱説明書には試運転の目的までは書かれていませんが、帰結ははっきり書かれています。マキタ9015B/9016BとHiKOKI FG 10SS2の取扱説明書はどちらも、試運転せずに作業を開始すると「思わぬけがの原因になります」としています。HiKOKIの取扱説明書では、作業前は人のいない方向に砥石を向けて試運転を行い、異常音や異常振動がしたときは直ちにスイッチを切って、砥石の取り付けやヒビ・割れを点検するよう案内されています。
注意したいのは試運転中の立ち位置です。ノリタケのカタログでは、試運転時には砥石の回転方向の前に立たないよう、携帯用グラインダは安全な場所で試運転するよう書かれています。マキタ9553Bの取扱説明書でも、新しい砥石で初めてスイッチを入れるときは回転面から一時身体を避けるよう案内されています。
材料は手で押さえず、確実に保持する
金属を切るときは、材料が動かないように固定してから切り始めます。宮城県公開の災害防止資料では、小さい加工物を加工する際は加工物を確実に保持して行うよう書かれています。
理由は、切断中に材料が動くと砥石が溝の中でねじれ、噛み込みやキックバックにつながるからです。HiKOKI FG 10SS2の取扱説明書でも、パネルや特大の加工物は、挟まりとキックバックのリスクを減らすため支持台で支えるよう書かれています。大きな材料は自重でたわみ、切り進めるうちに溝が閉じて砥石を挟むことがあるためです。
家でやりがちなのは、短いボルトやパイプを片手で押さえ、もう片方の手でグラインダーを持って切る方法です。両手でグラインダーを保持できないうえ、材料が回転してしまうと制御できません。
逆に、グラインダー本体を万力で固定して材料のほうを押し当てる使い方も、マキタの取扱説明書でしないよう書かれています。固定するのは材料、両手で持つのは工具、と覚えておきましょう。パイプを切る場面では、専用のパイプカッターのほうが向いていることもあります。

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保護めがね・手袋・マスクと、火花の行き先
金属の切断では火花と研削粉が飛ぶので、保護具をそろえ、火花の行き先を決めてからスイッチを入れます。
マキタ9553Bの取扱説明書では、作業時は保護めがねを使うよう書かれています。宮城県公開の資料では、安全メガネ、革手袋(アラミド繊維などの耐切創手袋が望ましい)、防塵マスクなどの防護具が挙げられています。
火花については、同じマキタの取扱説明書に、研削粉は火花となって飛散するので、引火しやすいものや傷つきやすいものは安全な場所に遠ざけ、火花を直接手足などに当てないよう書かれています。ノリタケのカタログでも、火花の飛ぶ範囲内には立ち入らないよう案内されています。
やりがちなのは、ガレージや庭先で、近くに段ボールや灯油缶、車のボディがあるまま切り始めるケースです。火花は思った以上に遠くまで飛びます。コツは、切る前に火花が飛ぶ方向を確認し、その先に燃えるもの・傷つけたくないものを置かないことです。
グラインダーで金属を切断する手順:当てる位置と進め方
スイッチは、砥石が材料に触れない位置で入れる
切り始めの基本は、砥石を材料から離した状態でスイッチを入れ、回転が安定してから当てることです。
マキタ9553Bの取扱説明書では、材料の上にベースの先端をのせ、切断砥石が材料に触れない位置でスイッチを入れ、回転が上昇し安定したら前方へ進めるよう案内されています。
取扱説明書に理由までは書かれていませんが、マキタ9015B/9016Bの取扱説明書は、使用中は振り回されないよう本体を確実に保持し、「とくに始動時は気をつけてください。」としています。起動の瞬間に材料に触れていると、手元が取られやすくなります。
やりがちな失敗は、墨線に砥石をぴったり合わせてからスイッチを入れることです。位置合わせは正確でも、起動の反動で砥石が線からずれたり、材料の角に噛んだりします。コツは、墨線の手前で砥石を浮かせておき、回転音が一定になってから静かに下ろすこと。そのとき両手でしっかり保持しているかも確かめましょう。
押し込まず、ゆっくり前へ進めて最後まで保つ
切り進めるときは、力で押し込まず、砥石の重さと回転に任せてゆっくり前へ送ります。マキタ9553Bの取扱説明書には、回転が安定したら「ゆっくり前方へ進め、切り終わるまでこの状態を保ってください。」と書かれています(マキタ 9553B 取扱説明書)。
押し込みたくなる気持ちはわかりますが、同じ取扱説明書には「切断中に本機をこじたり強く押し過ぎたりしないでください。」とも書かれ、「モータに無理がかかるばかりでなく本機自体に強い反発力を生じ、けがの原因になります。」と説明されています(マキタ 9553B 取扱説明書)。
やりがちなのは、切れが落ちてきたと感じて体重をかけてしまうことです。進みが遅いときは、押す力を増やすのではなく、砥石の状態や切込みの深さを見直しましょう。
コツは、同じ角度・同じ速さを切り終わるまで保つこと。途中で角度を変えると、砥石が溝の壁に当たってこじる形になります。
一度に深く切らない:HiKOKIは1回5 mm以下
厚みのある材料を切るときは、一度に深く入れず、浅く数回に分けて切り進めます。
HiKOKI FG 10SS2の取扱説明書には、「モーター故障の原因になるので、1 回の切込み量は 5 mm 以下にしてください。」と書かれています(HiKOKI FG 10SS2 取扱説明書)。同じ取扱説明書の国際安全規則の欄でも、切断用先端工具を噛み込ませたり過剰な圧力をかけたりせず、過剰な切断深さを得ようとしないよう書かれています。
理由は、深く入れるほど砥石と材料の接触面が増え、モーターの負荷と、砥石が挟まれるリスクの両方が高まるからです。なお、この5 mm以下という数値はHiKOKI FG 10SS2の取扱説明書の値で、メーカーや機種により異なります。手持ちの機種の取扱説明書で確認してください。
やりがちなのは、角パイプを一気に上から切り落とそうとすることです。コツは、表面に浅い溝を入れて切る線を決め、その溝をなぞるように少しずつ深くしていくこと。線がぶれにくく、砥石も挟まれにくくなります。
切り終えたら、回転が止まるまで置かない
切り終わったあとの最後のひと手間が、スイッチを切って砥石の回転が完全に止まってから置くことです。マキタ9553Bの取扱説明書にも、使用後はスイッチを切り、切断砥石の回転が完全に止まってから本機を置くよう書かれています。
理由は、スイッチを切っても砥石は惰性でしばらく回り続けるからです。回っている砥石が床や作業台に触れると、グラインダーがその方向へ走り出したり、砥石の縁が欠けたりします。
やりがちなのは、切り落とした瞬間にほっとして、すぐ作業台に置いてしまうこと。もう一つは、切ったばかりの材料の切り口に素手で触れることです。切断直後の切り口は熱を持っています。
コツは、切り終えたら砥石が止まるのを目で見届けてから、ホイールカバー側を下にしないよう向きを決めて置くこと。置く場所を作業前に決めておくと、慌てずに済みます。
切断の手順は、離して起動する→回転が安定してから当てる→押し込まずに同じ角度でゆっくり進める→止まるまで置かない、の流れです。進みが遅いと感じたら、力を足すのではなく切込みを浅くして回数を分けましょう。
キックバックはなぜ起きる?体の位置と途中で止まったときの対処
キックバックの正体は「挟まれた砥石の反動」
キックバックとは、回転している砥石が材料に挟まれたり引っかかったりして、その反動でグラインダーが手元へ跳ね返る現象です。
HiKOKI FG 10SS2の取扱説明書では、ジグザグ切断・曲線切り・斜め切り・コジリ・側面使用が、砥石の破壊やキックバックの原因になると書かれています。どれも、薄い砥石の側面に力がかかったり、溝の中で砥石がねじれたりする動作です。
同じ取扱説明書の説明では、先端工具が挟まったり引っ掛かったりすると急停止し、制御を失った電動工具は、その拘束時点における先端工具の回転と反対方向へ押しやられます。これが跳ね返りの仕組みです。
家でやりがちなのは、切り終わり付近で材料が垂れ下がり、溝が閉じて砥石を挟むケースです。材料の両側を支えておくと溝が開いたまま保たれ、挟まりにくくなります。
体を砥石と一直線にしない、後ろに立たない
キックバックが起きたときに大事なのが、体の位置を砥石の延長線上に置かないことです。
HiKOKI FG 10SS2の取扱説明書の切断作業に関する追加の安全指示では、体を切断用先端工具と一直線にしない、またその後方に置かないよう書かれています。同じ取扱説明書は理由を「切断用先端工具が、操作の時点で体からはなれていくとき、キックバックが起こると、切断用先端工具および電動工具が体に直接向かって進むことがある。」と説明しています。キックバックは、引っ掛かった時点のホイールの運動と反対の方向へ電動工具を進めるとされています。
やりがちなのは、正面から材料をのぞき込むように構え、砥石のちょうど後ろに顔や胴体が来てしまう姿勢です。切っている線がよく見えるので自然とそうなりがちですが、跳ね返りの進路にもなります。
コツは、切る線に対して体を少し斜めにずらして立ち、両手でグラインダーを保持すること。視線は横からのぞく形にします。足場が不安定な場所での作業は、跳ね返ったときに踏ん張れないので避けましょう。
途中で止まったら、抜いてから再スタートする
切断の途中で砥石が引っかかって止まりそうになったら、電源を切り、完全に止まるまで保持し、溝の中では再起動しないのが正しい対応です。
HiKOKI FG 10SS2の取扱説明書では、切断用先端工具が拘束されたときや何かの理由で切断を中断するときは電源を遮断し、完全に停止するまで保持するよう書かれています。さらに、加工物の中で切断作業を再開せず、全速に到達するのを待って、注意しながら切断部に再び入るよう案内されています。
同じ取扱説明書は、電動工具を加工物内で再始動すると、切断用先端工具が拘束されたり、上に上がってきたり、キックバックしたりすることがあると説明しています。また、切断用先端工具が動いている間は決して切断部から外そうとしない(キックバックが起こることがある)とも書かれています。
やりがちな失敗は、止まりかけた砥石を力で押し戻そうとしたり、溝に入れたままスイッチを入れ直したりすることです。コツは、いったん溝から抜き、空中で回転を上げてから、同じ溝に静かに戻すこと。挟まった原因(材料のたわみ・切込みの深さ)も見直しましょう。
壁や床の裏を切るときは、見えないものを切るおそれがある
壁や床に付いた金具を切る場合は、裏側に何があるか分からない状態で砥石を出さないことが前提です。
HiKOKI FG 10SS2の取扱説明書では、壁面の裏側に出た切断用先端工具が、ガス管・水管・電気配線などを切断することがあると注意喚起されています。表から見えない場所に砥石が出ると、配管や配線を傷つけるおそれがあります。
ガス・水道の配管や電気配線にかかわる工事は、資格が要る作業です。この記事ではその手順は扱いません。家でのDIYでは、取り外せる部材は外して作業台の上で切るのが基本です。
コツは、壁から突き出たボルトなどを切る場合でも、裏側の構造が分からないときは無理に切らないこと。下地の位置を確認する方法はこちらで解説しています。

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原因は、材料のたわみで溝が閉じたり、一度に深く切り込みすぎたりして砥石が挟まれることです。対策は、材料の両側を支え、切込みを浅く分けること。止まりかけたら電源を切って完全に止め、溝から抜いて回転を上げてから入り直します(HiKOKI FG 10SS2 取扱説明書の追加の安全指示より)。
やってはいけない5つの動作と、その理由
砥石の側面で削る・押し付けるのはNG
切断砥石で一番やってはいけないのが、砥石の側面(平らな面)を材料に当てて削ることです。
労働安全衛生規則の第120条には、「事業者は、側面を使用することを目的とする研削といし以外の研削といしの側面を使用してはならない。」と定められています(e-Gov法令検索 労働安全衛生規則)。ノリタケのカタログ、マキタ・HiKOKIの取扱説明書でも、側面使用はしないよう書かれています。
取扱説明書が挙げる帰結は、砥石の破壊とけがです。HiKOKI FG 10SS2の取扱説明書では、切断トイシの側面使用やジグザグ切断・曲線切り・斜め切り・コジリについて「切断トイシやダイヤモンドカッターが破壊したり、キックバックが発生するなど、けがの原因になります。」とされています。マキタ9015B/9016Bの取扱説明書でも、オフセット砥石を側面や上面で研削すると「砥石が破壊し、けがの原因になります。」と書かれています。
やりがちなのは、切り終わったあとのバリを、付けたままの切断砥石の側面でなでるように取ってしまうことです。ひと手間惜しんで砥石を替えないと、こういう使い方になりがちです。コツは、バリ取りや面の仕上げは研削用の砥石に付け替えてから行うこと。用途ごとに砥石を替えるのが基本です。
ジグザグ・曲線・斜め切り・こじりをしない
切断砥石はまっすぐ切るための道具です。マキタ9553Bの取扱説明書では、ジグザグ切断、曲面切り、ガイドを使わない斜め切り、コジリ、側面使用はしないよう書かれています。
理由はどれも同じで、砥石の側面に力がかかるからです。曲線を描こうとすると、溝の中で砥石がねじれます。斜めに当てたまま切り進めると、砥石が溝の片側の壁にこすれ続けます。こじりは、溝の中で砥石をてこのように使う動作で、側面に大きな力がかかります。HiKOKIの取扱説明書でも、これらは砥石の破壊やキックバックの原因とされています。
やりがちなのは、切り線から少しずれたときに、グラインダーをひねって軌道を戻そうとすることです。ずれに気づいたら、いったん止めて抜き、正しい位置から浅い溝を入れ直しましょう。
曲線や穴の形に金属を切りたい場合は、グラインダーの切断砥石では対応できない作業だと考えるのが安全です。
水や研削液をかけない、上向きで使わない
切断中に熱くなるからと水をかけるのはNGです。マキタ9015B/9016Bの取扱説明書では、乾式用のため水や研削液などは使用しないよう書かれ、HiKOKI FG 10SS2の取扱説明書でも水や研削液などをかけて使用しないよう書かれています。
その帰結について、マキタ9015B/9016Bの取扱説明書は「乾式用のため、砥石の破壊によるけがや感電の恐れがあります。」と書き、HiKOKI FG 10SS2の取扱説明書も同じ趣旨(トイシの破壊によるけがや感電の恐れ)を挙げています。危険は感電だけでなく、砥石そのものの破壊にもつながるということです。熱が気になるときは、水で冷やすのではなく、切込みを浅くして作業を分け、材料が冷めるのを待ちましょう。
もう一つ、宮城県公開の災害防止資料では、砥石を上向きにして使うことはしないよう書かれています。資料に理由の説明はありませんが、マキタ9553Bの取扱説明書にも「上向き(定置形)にして使用しないでください。」とあり、本体を上向きに据え置いて(定置形として)使う使い方を禁じたものです。
やりがちなのは、本体を台の上に砥石を上へ向けて置き、材料のほうを砥石に当てて切ろうとする使い方です。マキタ9015B/9016Bの取扱説明書は、使用中は振り回されないよう本体を確実に保持するよう書いています。グラインダーは手で確実に保持して使う工具と覚えておきましょう。
ホイールカバーを外さない
作業のじゃまになるからとホイールカバーを外して使うのはNGです。宮城県公開の資料では、ホイルガードを外して運転しないよう、労働安全衛生規則の第117条とあわせて書かれています。
ホイールカバーは、砥石が割れたときに破片が作業者のほうへ飛ぶのを防ぐ部品です。切断砥石専用のカバーに付け替えるよう取扱説明書が案内しているのも、同じ目的からです。
やりがちなのは、カバーが材料に当たって奥まで入らないとき、カバーを外したり、向きを大きく変えたりすることです。切りたい位置まで届かない場合は、材料の固定の向きを変える、別の工具を選ぶといった方法で対応しましょう。
コツは、作業の前にカバーの向きを調整し、作業者側が覆われているかを確認すること。カバーの向きの調整方法は、機種ごとに取扱説明書に書かれています。
原因は、切ったあとに砥石を付け替えるのが面倒で、切断砥石の側面で切り口をなでてしまうことです。切断砥石の側面使用は、取扱説明書と労働安全衛生規則の第120条で禁止されています。対策は、バリ取りは研削用の砥石に付け替えてから行うこと。付け替えたら試運転も忘れずに。
どのサイズのグラインダーと砥石で切る?作業と人で考える
100mm・125mm・150mmは「付けられる砥石の径」の違い
ディスクグラインダーのサイズ表記は、取り付ける砥石の径を表しています。マキタでは100mmの9553B、125mmの9015B、150mmの9016Bといった機種があり、HiKOKIのFG 10SS2は100 mmの機種です。
径が大きいほど、同じ回転でも外周の周速度は速くなり、一度に届く深さも変わります。一方で本体は大きくなるので、取り回しは変わります。どちらが良いというより、切りたい材料の大きさと、自分が両手で安定して保持できるかどうかで考えるのが筋道です。
注意したいのは、サイズが違えば対応する砥石も部品も違うことです。HiKOKI FG 10SS2の切断用別売部品は外径100 mm仕様と明記されています。125mmの機種に100mm用の砥石を付けたり、その逆をしたりはできません。
コツは、本体を選ぶ段階で、その機種に対応する切断用のカバー・フランジ(ナット)が手に入るかを取扱説明書で確認しておくことです。
薄板・パイプ・アングル:材料の形で固定を変える
同じ金属でも、形によって固定のしかたと切り方の注意が変わります。
薄い鉄板のような大きな板材は、HiKOKIの取扱説明書が言うとおり支持台で支えるのが基本です。切り落とす側が垂れ下がると溝が閉じて砥石を挟みやすくなるので、切る線の両側を支えます。
丸いパイプは、固定しないと転がります。万力などで確実に保持し、上から一気に切り落とすのではなく、浅い溝を入れてから少しずつ深くします。切り口の精度を求めるなら、パイプカッターのような専用工具のほうが向いている場面もあります。
L字のアングルは、2つの面を順に切ることになります。片方の面を切っている最中に、もう片方の面に砥石の側面が当たらないよう、固定の向きと切る順番を考えておきましょう。
ボルトやねじの余りのような小物は、宮城県公開の資料にあるとおり、確実に保持することが前提です。手で押さえて切るのは避けましょう。
実は「法律の義務」は事業者向け。それでも同じ理屈が当てはまる
意外と知られていないのが、試運転や側面使用の禁止を定めた労働安全衛生規則は、事業者に課された義務だということです。条文はどれも「事業者は」で始まり、働く人を守るための規定です。家庭のDIYに、この規則が直接の法的義務として及ぶわけではありません。
では家では関係ないかというと、そうではありません。マキタ9015B/9016Bの取扱説明書には関連法令として労働安全衛生規則第36条が明記され、マキタ9553Bの取扱説明書にも、事業者向けに砥石の取替え・試運転は特別教育を受けた人に行わせるよう書かれています。第36条第1号では、研削といしの取替えや取替え時の試運転の業務が特別教育の対象とされています。
つまり、プロの現場で教育が求められるほど、砥石の扱いは事故につながりやすい作業だということです。家でやるDIYでも、取扱説明書に書かれた試運転や側面使用の禁止は、同じ理屈で守るべき内容と考えましょう。
周速度:回転する砥石の外周が一定時間に進む距離。m/s(1秒あたり)やm/min(1分あたり)で表示されます。
使用周速度の上限:その砥石を安全に使用できる限度の周速度(ノリタケ技術資料の定義)。
キックバック:回転中の先端工具が材料に挟まれたり引っかかったりして、工具が跳ね返る現象。
特別教育:労働安全衛生規則第36条で定める、危険な業務に就く人への教育。研削といしの取替え・試運転の業務が対象です。
はじめての人・ときどき使う人・量をこなす人の使い分け
最後に、読者のタイプ別に、どこから手をつけるかを整理します。
はじめて金属を切る人は、まず手持ちのグラインダーの取扱説明書を開き、切断用のカバーとフランジ(ナット)が別売かどうかを確認するところから始めましょう。部品がそろわないうちは切断しない、と決めてしまうのが確実です。
ときどき使う人は、砥石の保管状態を見直すのがおすすめです。前回使ってから時間が空いた砥石は、湿気やぶつけた跡がないか、外観と打音で確かめてから付けます。作業始めの1分間の試運転も習慣にしましょう。
何本も続けて切る人は、疲れてきたときに押し込みがちになる点に注意が要ります。進みが遅くなったら、押す力ではなく切込みの深さと砥石の状態を見直すこと。砥石を交換したら3分間以上の試運転を挟みます。
どのタイプでも共通するのは、切断砥石・専用カバー・保護具・材料の固定の4つがそろってからスイッチを入れる、という順番です。
まとめ
グラインダーでの金属の切断は、砥石の種類、付ける部品、切る前の点検と試運転、材料の固定、そして押し込まない進め方が一本の線でつながっています。どれか一つが欠けると、砥石が挟まれたり側面に力がかかったりして、キックバックや砥石の破損につながります。逆に言えば、取扱説明書に書かれた順番を守れば、家でのDIYでも落ち着いて作業できます。最初の一歩として、今日は手持ちのグラインダーの取扱説明書を開き、別販売品の欄に切断用のホイールカバーとフランジ(ナット)が載っているかを確認してみてください。部品名と部品番号がわかれば、準備の半分は終わったようなものです。
※最新情報は各メーカーの公式サイト・取扱説明書でご確認ください。

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