白木の棚や小物にニスを塗ったら、表面に小さな穴の跡がぽつぽつ残ってざらついた。塗料売り場で「との粉」という袋を見かけたけれど、何に使う粉なのか、どう塗ればいいのかがわからない。木工や塗装を始めたばかりだと、こうした疑問にぶつかりやすいものです。
先に結論をいうと、との粉は風化した岩石を細かく砕いた粉で、木の表面にある小さな穴(導管)を埋めて塗装面をなめらかにする「目止め」に使う材料です。水と1対1を目安に混ぜ、まだ塗装していない木に塗ってすり込み、よく乾かしてから研磨し、最後にニスなどの塗料で上塗りする。この流れを守れば、家でのDIYでも十分に扱えます。
この記事では、京都・山科の砥之粉製造元の説明、塗料メーカーの和信ペイントとアサヒペンの公式資料、北海道立の林産試験場の技術資料、労働局の通知といった一次情報をもとに、との粉の正体、目止めが効きやすい木、赤・白・黄の選び方、混ぜ方と塗り方、乾燥後の研磨と上塗り、粉じんへの配慮までを「なぜそうするのか」の理屈から順に解説します。
・との粉の正体(風化した粘板岩・頁岩の粉)と、目止めが必要になる理屈
・赤・白・黄の3色の役割と、木の色に合わせた選び方
・水1対1の混ぜ方、240番研磨からすり込み・拭き取り・上塗りまでの手順
・乾いた粉を吸い込まないための配慮と、買う前に確認したいこと
との粉とは?風化した岩石の粉が木工に欠かせない理由

正体は「極度に風化した粘板岩・頁岩」を細かくした粉
との粉は、薬品から合成した粉ではなく、天然の岩石をもとにした粉です。京都・山科の砥之粉製造元は、原料について「砥ノ粉の原石は極度に風化した粘板岩、頁岩でその速度によって色目が変わることを利用して赤色・白色・黄色の砥ノ粉を製造しています。」と説明しています。
ここで押さえておきたいのは、色の違いが「着色料を混ぜたから」ではなく、原石の風化の進み方の違いから生まれているという点です。つまり赤・白・黄は、もともと別の性格をもった粉として作り分けられています。後の章で触れる「色の選び方」は、この成り立ちを知っておくと納得しやすくなります。
やりがちなのは、との粉を「木工用のパテ」と同じものだと思い込んでしまうことです。パテは割れや欠けを盛って埋める材料ですが、との粉は木の表面にある細かい穴に入り込ませて平らにする材料で、役割の粒度がまったく違います。大きな傷や欠けをとの粉だけで埋めようとすると、乾いた後に痩せたり崩れたりする原因になります。
購入前に袋や製品ページを見るときは、「目止め」「木部・木工品」と書かれているかを確認しましょう。用途表示がそうなっていれば、との粉としての使い方が想定された製品です。
「砥の粉」「砥之粉」「とのこ」は表記が違うだけ
との粉は、売り手や資料によって書き方がばらばらです。山科の製造元は「砥之粉」「砥ノ粉」、和信ペイントの塗装ガイドは「との粉」、アサヒペンの製品名は「とのこ」と表記しています。中身はいずれも木部の目止めや下地に使う粉で、呼び名の違いに深い意味はありません。
表記がそろわない理由のひとつは、との粉が漆塗りや建具づくりといった伝統的な木工の現場で長く使われてきた材料で、地域や業種ごとに書き方が定着してきたことにあります。DIY向けの塗料メーカーは、読みやすさを優先してひらがなを使っている、と考えると整理しやすいでしょう。
家でのDIYでありがちな失敗は、通販サイトや売り場の検索で一つの表記しか試さず、「扱っていない」と思い込んでしまうことです。「とのこ」で出てこなくても「砥の粉」なら見つかる、ということは珍しくありません。逆に、似た名前の「砥石の粉」や研磨剤と取り違えないよう、用途欄に「目止め」とあるかを必ず確かめてください。
検索するときは、「とのこ」「との粉」「砥の粉」の3通りを試し、製品ページの用途に「木部・木工品の目止め」と書かれているものを選ぶのがコツです。
漆の下地から白木の手あか防止まで、木工で使われてきた用途
との粉の用途について、山科の製造元は「砥之粉(とのこ)とは、風化した岩石を加工し粉末にしたもので、漆塗りの下地や木製品の表面の仕上げなどに使われ、木工芸には不可欠な材料です。」と紹介しています。漆器の下地、桐タンスの仕上げ、建築の白木など、表面の質感が問われる場面で使われてきた材料です。
なぜ下地や仕上げに向くのかというと、細かい粉が木の表面のくぼみに入り込み、乾くとその場所を埋めた状態になるからです。その上に塗料をのせると、塗料が穴に吸い込まれてへこむことが減り、表面がそろいやすくなります。
DIYで差が出るのは、ナラやタモのように木目の穴がはっきり見える木でテーブルの天板や棚板を作るケースです。目止めを省いてニスを重ねると、穴の部分だけ塗膜が沈み、光にかざしたときに点々とした凹凸が見えることがあります。
注意したいのは、伝統的な用途の多くが専門の職人の工程の一部だという点です。家でのDIYでは、塗料メーカーがDIY向けに出している手順(和信ペイント・アサヒペンの資料)をベースにし、製造元の説明は「なぜそうするのか」を理解する材料として読むのが安全です。
粉の細かさが「木目に入りやすさ」を決める
との粉が目止めに使えるのは、粒が細かく、水に溶いたときに木の穴へ入り込みやすいからです。アサヒペンの製品ページでは、特長として「水に溶けやすい微粉末で、木目に入りやすい。」と案内されています。
山科の製造元も、120メッシュの網に通したあと150メッシュの網にもう一度通す「二度網」を、同社独自の製法として説明しています。メッシュは網目の細かさを表す数字で、数字が大きいほど網目が細かくなります。粒をそろえて細かくするのは、木の小さな穴に入り込みやすくし、表面にざらつきを残しにくくするためと読み取れます。
やりがちなのは、袋を開けてから時間がたった粉や、湿気を吸って固まった粉をそのまま水に溶いてしまうことです。ダマが残ると、すり込んだときに穴に入りきらず、表面に粒が残ってしまいます。
混ぜる前に粉の状態を見て、固まりがあれば指でほぐしてから水に溶くようにしましょう。粉の細かさがとの粉の性能の土台だと知っておくと、扱い方が丁寧になります。
目止め=木の表面にある細かい穴(導管)を埋めて、塗装面を平らにととのえる下ごしらえの工程。
導管=広葉樹の中で水分を運ぶ管。木を切ると断面に小さな穴として現れ、木目の中に点や筋として見える。
環孔材=年輪の境目に大きな導管が並ぶ広葉樹。ナラ・タモ・センなどがこの仲間とされる。
メッシュ=網目の細かさを表す数字。数字が大きいほど細かい。
目止めは何のため?導管の大きい木ほど差が出るしくみ
目止めは「塗料の吸い込み」と「表面の凹凸」を減らす下ごしらえ
目止めの目的は、塗装の前に木の表面の穴を埋めて、塗料が均一にのる土台をつくることです。木の表面は平らに見えても、導管という管の断面が無数に口を開けています。そのまま塗料を塗ると、穴の部分にだけ塗料が吸い込まれ、乾いたあとに塗膜が沈んで凹凸として残ります。
この理屈は、北海道立の林産試験場の合板塗装に関する技術資料でも裏づけられます。資料では、「導管孔の大きい環孔材の平滑仕上げを得るには素地の目止めを完全にする」と説明されています(北海道立総合研究機構の技術資料)。
家でのDIYで起きやすいのは、ニスを何度も塗り重ねて穴を埋めようとするパターンです。塗料で穴を埋めるには回数がかさみ、そのたびに乾燥と研磨が必要になります。しかも塗膜が厚くなるほど、垂れや塗りムラのリスクも増えていきます。
目止めを先に済ませておけば、上塗りは「穴を埋める仕事」から解放され、「表面を守る仕事」に集中できます。工程が一つ増えるように見えて、結果的に塗り重ねの手間を減らす発想だと捉えると、目止めの価値がわかりやすくなります。
ナラ・タモ・センのような環孔材で差が出やすい
目止めの効果がはっきり出るのは、導管の大きい広葉樹です。前述の技術資料は「セン,タモ,ナラのような環孔材」を例に挙げ、導管孔の大きい木として扱っています。こうした木は、木目に沿って小さな溝や点がはっきり見えるのが特徴です。
反対に、導管をもたない針葉樹や、導管が細かく散らばった広葉樹では、穴自体が目立ちにくく、目止めの必要性は低くなります。つまり「との粉を使うかどうか」は、木の種類を見て決めるのが筋道です。
やりがちなのは、どの木にも同じ手順を当てはめてしまうことです。導管の目立たない木にとの粉を厚く塗ると、表面に粉の層が残り、上塗りの密着を悪くするおそれがあります。目止めは「穴があるから埋める」工程なので、穴が目立たない木では無理に行う必要はありません。
判断に迷ったら、木の表面を斜めから光に当てて観察してみてください。木目に沿って小さな穴や筋が並んで見えるなら、目止めを検討する価値があります。木の種類ごとの性質は、次の記事も参考になります。

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合板の資料をどこまで参考にするか
先の林産試験場の資料は、あくまで合板の塗装を対象にした技術資料です。無垢材でDIYをする場合の具体的な手順の根拠として使うのではなく、「導管の大きい木は目止めをしないと平らな塗装面になりにくい」という理屈の裏づけとして読むのが適切です。
なぜ区別が必要かというと、合板は表面の単板が薄く、下地の状態や塗装工程が無垢材と異なるからです。工場での塗装を前提にした資料の数値や工程を、そのまま家の作業台に持ち込むと、条件が合わずに失敗することがあります。
具体例として、資料には環孔材の合板にリバースローラーコーターで「しごき塗り」をすると「導管孔が強く着色されて木目が非常に鮮明になる」という記述があります。これは「導管は塗料や着色剤を吸い込みやすい場所」であることを示しており、目止めの必要性を理解するうえで役立ちます。一方で、家庭でどの程度の色の差が出るかは、木の個体差や使う塗料によって変わります。
実際の作業手順は、和信ペイントやアサヒペンといった塗料メーカーがDIY向けに公開している資料に沿って進めましょう。理屈は技術資料、手順はメーカー資料、と役割を分けて読むと迷いにくくなります。
塗装済みの面には使わない——目止めは未塗装木部の工程
との粉を使えるのは、まだ何も塗っていない木の面です。和信ペイントの塗装ガイドは「目止め処理は未塗装木部に対して行なう工程です。」と明記しています。
和信ペイントのガイドは理由も書いていて、塗装面に対して行うと「乾燥後にとの粉が粉末に戻ったとき、全て取れてしまいます」としています。塗膜で穴がふさがっている面では、との粉が留まる場所がないということです。
やりがちなのは、古い家具を塗り直すときに「ついでに目止めも」と考え、既存の塗膜を残したままとの粉を塗ってしまうケースです。塗り直しで目止めをしたい場合は、既存の塗膜を落として木の地肌を出すところから始める必要があり、作業量が大きく変わります。
作業前に、木の表面に水を一滴落としてみるのも手がかりになります。すぐに吸い込むなら未塗装に近く、玉になって弾くなら塗膜や油分が残っている可能性があります。迷う場合は、目立たない場所で状態を確かめてから進めましょう。
目止めは「導管という穴があるから埋める」工程です。ナラ・タモ・センのような環孔材で効果が出やすく、導管の目立たない木では無理に行う必要はありません。また、対象は未塗装の木だけ。塗装済みの面には使わないのが和信ペイントの案内です。
赤・白・黄はどう選ぶ?色ごとの用途と仕上がりの違い

製造元が示す3色の役割を一覧で見る
との粉には赤・白・黄の3色があり、製造元はそれぞれに主な用途を示しています。色によって向いている場面が分かれているので、まずは一覧で全体像をつかんでおきましょう。下の表は、山科の砥之粉製造元の説明と和信ペイントの塗装ガイドの記載から、工具・DIYの教科書が整理したものです。
| 項目 | 赤 | 白 | 黄 |
|---|---|---|---|
| 製造元が示す主な用途 | 漆塗りの下地、木製品の目止め、なめらかな仕上げ | 建築の白木の手あか防止、目止め、なめらかな仕上げ | 桐タンスの目止め、なめらかな仕上げ |
| 色の成り立ち | 原石(粘板岩・頁岩)の風化の速度の違いで色目が変わる | ||
| 仕上がりの色への影響 | 木材に近い色調を選ぶのが和信ペイントの案内 | 目止めで色が濃く(暗く)なる傾向の中で、3色のうち比較的影響が少ない(和信ペイント) | 木材に近い色調を選ぶのが和信ペイントの案内 |
| DIYでの考え方 | 赤みのある木や、色の濃い仕上げを考えるとき | 白木の風合いを保ちたいとき | 桐のように明るい黄みの木 |
表からわかるとおり、色ごとの違いは「どの木・どの仕上げに使われてきたか」という用途の違いです。たとえば白について、製造元は「主に建築の白木に使用する手あか防止、目止め、なめらかな仕上げに使用します。」と説明し、黄については「主に桐タンスの目止め、またなめらかな仕上げに使用します。」としています。
やりがちなのは、色の名前だけを見て「白は何にでも合う」「赤は濃い木専用」と単純化してしまうことです。用途の説明は伝統的な使われ方の目安で、仕上がりの色は木の色・上塗りの塗料との組み合わせで決まります。選ぶときは、表の用途欄と、手元の木の色を並べて考えるのがコツです。
迷ったら「木に近い色」——和信ペイントの選び方
DIYで色を選ぶときのいちばんの手がかりは、塗る木の色に近いものを選ぶことです。和信ペイントの塗装ガイドは、手順の最初に「との粉の色を決める」工程を置き、木材に近い色調を選ぶよう案内しています。同社は「和信ペイントでは、黄色・白・赤の3色のとの粉を販売しています。」としたうえで、色の選び方を最初のステップにしているのです。
木に近い色が良い理由は、との粉が導管の中に入り込んで残る材料だからです。表面の余分は拭き取りますが、穴の中の粉は仕上げのあとも残ります。木と粉の色が近ければ、穴の部分が目立ちにくく、木目の見え方が自然にそろいます。
やりがちな失敗は、手元にある色をそのまま使ってしまうことです。木の色と離れた色を使うと、穴の部分だけ色が違って見え、木目に沿って点や筋が浮き出たような仕上がりになることがあります。狙った表現ならよいのですが、意図しない場合は「なぜか木目がうるさい」という不満につながります。
選ぶときは、売り場で袋の色見本や製品写真を確認し、手元の木の切れ端と見比べるのが確実です。どうしても迷う場合は、後述する試し塗りで色の出方を確かめてから本番に進みましょう。
実は「とりあえず白」より端材での見比べが近道
意外と知られていないけれど、色選びで頼りになるのは「白なら無難」という思い込みより、端材での見比べです。和信ペイントの塗装ガイドには「白は比較的色の影響が少ない傾向があります。」という記述があります。これは「目止めをした場合、木に直接ニスやステインを使ったときよりも色合いが濃く(暗く)なる傾向がありますが」という前置きに続く一文で、3色の中では白が比較的その影響が少ない、という意味です。ここだけを読むと白がいつでも安全に見えます。ただ、同じガイドは手順の最初で「木材に近い色調を選ぶ」ことも求めています。
この二つを合わせて読むと、白は「色の影響が少なめ」ではあるものの、木の色と合わせる考え方は変わらない、ということになります。さらに前述の林産試験場の資料には、塗装機でしごき塗りをすると導管孔が強く着色されるという記述があります。導管は色を吸い込みやすい場所なので、粉の色の差がそこに集まって見えやすいと考えられます。
具体的には、色の濃い木を目止めしたあとで着色やステイン仕上げをするとき、穴に入った粉の色が仕上がりにどう影響するかは、木と塗料の組み合わせ次第です。カタログの説明だけでは判断しきれない部分なので、実物で確かめるのが一番の近道になります。
端材を用意して、候補の色を並べて塗り、上塗りまで済ませてから見比べると、本番の失敗を減らせます。着色剤やオイル系の仕上げを考えている人は、次の記事で着色とオイルの違いも確認しておくと判断しやすくなります。

との粉の使い方|研磨から拭き取りまで7つの流れ
下準備は240番の空研ぎで木目に沿って
との粉を塗る前に、まず木の表面をととのえます。和信ペイントの塗装ガイドは素地調整として「240番の空研ぎサンドペーパーを使って、木目に沿って研磨します。」と案内し、研磨カスを取り除いてから次に進むよう求めています。
和信ペイントのガイドは研磨の理由として、カンナをかけてある木材は表面がきれいに見えても「塗料が染み込みにくい状態になっているので、しっかり研磨してください」と書いています。あわせて、表面の毛羽立ちや汚れを落としておく意味もあると考えられます。木目に逆らって研ぐと、繊維が傷ついて表面がけば立ち、仕上がりが荒れます。
やりがちなのは、研磨カスを残したまま塗り始めることです。木の粉が導管に詰まった状態でとの粉を塗っても、穴の奥まで入りきらず、目止めの効果が下がります。また、拭き取りの段階でカスが混ざると、表面にざらつきが残る原因になります。
研磨したら、乾いたウエスや刷毛で表面の粉をしっかり払い落としましょう。空研ぎ用のサンドペーパーを選ぶのは、水を使わずに研げるからです。この段階で木を濡らすと、乾くまで次の工程に進めなくなります。
厚めに塗って、乾く前に円を描くようにすり込む
水で溶いたとの粉は、塗るだけでなく「すり込む」のが肝心です。和信ペイントのガイドでは、ハケでやや厚めに塗り、乾く前にウエスで円を描くように力を入れてすり込み、余分を拭き取る流れが示されています。アサヒペンの製品ページでも「ハケまたはウエスで刷り込むように塗ります。」と案内されています。
円を描くようにすり込むのは、導管が木目に沿って並んでいるからです。木目と同じ方向にだけ動かすと、粉が穴の上を滑ってしまい、奥まで入りきらないことがあります。方向を変えながら押し込むことで、穴の口に粉を詰めやすくなります。
一方で、山科の製造元の日曜大工向け案内では、ハケやウエス・布で木目に沿って塗り、半乾きの状態で木目に刷り込むように余分を拭き取る流れが紹介されています。動かし方の表現はメーカーにより異なりますが、「穴に押し込み、表面の余分は残さない」という目的は共通しています。
注意したいのは、拭き取りのタイミングです。完全に乾いてから拭くと、表面の粉が固まって取れにくくなります。逆に塗ってすぐ拭くと、穴に入る前に粉を取り除いてしまいます。使う製品の案内に沿って、乾ききる前に余分を取るのが基本です。
乾燥・二度目・最終研磨までの流れをつかむ
すり込みと拭き取りが終わったら、水分が抜けるまで充分に乾かします。和信ペイントのガイドでは、乾燥のあと目止め不足があれば、塗ってすり込む工程と乾燥をもう一度繰り返し、最後に240番で木目に沿って研磨して乾いたウエスで拭き取る、という流れが示されています。全体を手順にすると次のようになります。
二度目を入れるかどうかは、乾いた表面を斜めから光に当てて判断します。穴がまだ点々と見えるなら、目止め不足のサインです。やりがちなのは、乾ききる前に次の工程へ進んでしまうことで、水分が残ったまま研磨すると粉が削れず、ペーパーが目詰まりします。乾燥は時間で決めるより、表面の状態を見て判断するのが確実です。
ウエスはタオル地を避けて、埃を残さない
すり込みや拭き取りに使う布は、何でもよいわけではありません。和信ペイントのガイドでは、タオル地は埃が出やすいので避けるよう案内されています。目止めは表面をなめらかにするための工程なので、布から出る糸くずや埃が混ざると、その努力が台無しになります。
タオル地が不向きな理由は、表面のループ状の糸が引っかかって抜けやすく、細かい繊維が木の表面や導管に残りやすいからです。との粉と一緒に繊維が穴に押し込まれると、乾いたあとに取り除くのが難しくなり、上塗りで繊維の形が浮き出ることもあります。
家でのDIYでありがちなのは、使い古しのバスタオルを切って使うパターンです。手軽ですが、拭くたびに毛羽が出て、仕上がりの表面に細かい糸くずが散らばる原因になります。最終研磨後の拭き取りでも同じことが起きるので、工程全体で布の選び方をそろえておきましょう。
用意するなら、毛羽の出にくい綿の布や、塗装用として売られているウエスが向いています。すり込み用と最終の拭き取り用で布を分けておくと、粉の混ざった布で仕上げ面を拭いてしまう失敗も防げます。
水の量と硬さで失敗が決まる?混ぜ方と塗る日の選び方

水との割合は1対1が目安、厳密に量らなくていい
との粉は水で溶いて使います。割合の目安は、和信ペイントの塗装ガイドでも、山科の製造元の日曜大工向けの案内でも、との粉と水を1対1としています。和信ペイントは、厳密に計量する必要はないとも説明しています。
割合を厳密にしなくてよいのは、粉の状態や作業環境によって、ちょうどよい硬さが変わるからです。湿気を吸った粉と乾いた粉では、同じ量の水でも仕上がりの硬さが変わります。数字よりも「塗りやすく、すり込める硬さか」を見て調整するほうが、実際の作業に合っています。
やりがちなのは、レシピのように1対1をきっちり守ろうとして、硬さの確認を忘れることです。量りどおりに混ぜても、粉が固まっていたり、水が多すぎたりすると、塗りにくい・ひび割れるといった問題が起きます。
うすめ液は水(水道水)で、特別な溶剤は要りません。容器は使い捨てのカップなど、洗いやすいものを選ぶと後片付けが楽になります。混ぜる量は塗る面積に合わせて少しずつ用意し、使い切れる分だけ作るのがコツです。
硬さは「ホットケーキミックスの液状生地」くらい
硬さの目安について、和信ペイントのガイドは、ホットケーキミックスで作った液状の生地ぐらいと表現しています。とろりとして流れるけれど、さらさらの水ではない、という状態です。混ぜ方としては、水を少なめにして混ぜ、固ければ水を足すよう案内されています。
水を少なめから始める理由は、薄めるのは簡単でも、濃くするのは手間がかかるからです。水を入れすぎてしまうと、粉を足して混ぜ直す必要があり、ダマができやすくなります。少しずつ水を足しながら混ぜていけば、狙った硬さに近づけやすくなります。
硬さが合っていないと、作業の各段階で問題が出ます。固すぎると塗り広げにくく、導管に押し込む前に表面で固まりがちです。柔らかすぎると粉の量が足りず、穴を埋めきれないまま水分だけが木に吸われ、目止めの効果が薄くなります。
混ぜたあとは、ハケですくって落としてみると状態がつかめます。ゆっくり流れ落ちるくらいなら目安に近い硬さです。作業中に水分が飛んで固くなってきたら、少量の水を足して調整しましょう。
端材で試し塗りして、ひび割れたら水不足
本番の前に、同じ木の端材で試し塗りをしておくと、硬さと色の両方を確認できます。和信ペイントのガイドでは、端材に試し塗りして表面がすぐにひび割れるようなら水が足りない、と案内されています。
状況:テーブルの天板にいきなり塗り始め、乾くと表面が細かくひび割れ、粉がぽろぽろ落ちてきた。
原因:水が足りず、との粉が固い状態で塗られた。和信ペイントのガイドでも、試し塗りで表面がすぐにひび割れるなら水不足とされている。
対策:本番と同じ木の端材で先に試し、ひび割れたら水を少し足して硬さを調整する。色の出方も同時に確認できる。
ひび割れが起きる理由は、水が少ないと粉どうしのつながりが弱いまま乾き、乾燥による縮みに耐えきれなくなるからです。そのまま上塗りをしても、割れた部分から塗膜が浮く原因になりかねません。
試し塗りでは、ひび割れの有無に加えて、すり込みやすさ、拭き取りやすさ、乾いたあとの色も見ておきましょう。端材の上で一連の工程を通しておけば、本番で手が止まることも減ります。
雨の日・湿った曇りの日・冷え込む日は避ける
との粉は水で溶いて使う材料なので、乾きやすい日を選ぶことが仕上がりを左右します。和信ペイントのガイドは、作業を避けたい日として「雨天や、湿度の高い曇天、極端に気温が低い日(乾燥に時間がかかります)」を挙げています。
こうした日に乾きにくい理由は、空気中の水分が多いほど、木と粉から水分が抜けにくくなるからです。気温が低い日も同じで、水分の蒸発が遅くなります。乾ききらないまま次の工程に進むと、研磨でペーパーが目詰まりしたり、上塗りの塗料が密着しにくくなったりします。
一方で、山科の製造元の案内には「日陰でよく乾かしてから」という表現もあります。製造元は理由までは書いていませんが、早く乾かそうと直射日光に当てるより、日陰で乾かすよう案内している、と読めます。
家でのDIYなら、晴れて空気が乾いている日の日中に作業を始め、乾燥中は日陰の風通しのよい場所に置いておくのが現実的です。天気予報で雨や湿った曇りが続きそうなら、日程をずらす判断も仕上がりを守ることにつながります。
乾いたあとが本番|研磨と上塗りで仕上げを安定させる
との粉はその場に留まる力がない——だから上塗りが要る
目止めが終わっても、それで仕上げ完了ではありません。和信ペイントのガイドは、との粉にはその場に留まる力がないので、ニスなどの塗料で上塗りするよう案内しています。との粉は穴を埋めてくれますが、それ自体が表面を守る膜になるわけではないのです。
その理由は、との粉が岩石の粉を水で溶いただけの材料で、乾くと元の粉に戻るからです。接着剤や樹脂のように固まって木にくっつくわけではないので、触ったりこすったりすると表面の粉が取れていきます。上塗りの塗料が粉を閉じ込めて固定することで、はじめて目止めが仕上げとして機能します。
状況:目止め後の表面がすべすべになったので満足し、上塗りをせずに使い始めたら、触るたびに手や物に粉がつく。
原因:との粉にはその場に留まる力がない(和信ペイントのガイド)。乾けば元の粉に戻るため、上塗りで固定しないと少しずつ取れていく。
対策:目止めは下地づくりと割り切り、最終研磨・拭き取りのあとにニスなどの塗料で上塗りする。
目止め後の手ざわりがよいと、つい完成した気分になりますが、そこは仕上げの入口です。上塗りまでを一つの作業として計画しておきましょう。オイルステインとニスを組み合わせる仕上げを考えているなら、次の記事も参考になります。

オイルステインを買ってきたけれど、刷毛で塗るのか布で拭くのか、どれくらい待てば次に進めるのか。缶の説明を読むとニスを上塗りするように書いてあり、ステインだけでは…
最終研磨の粉は「必ず乾いたウエスで」拭き取る
上塗りの前には、240番で木目に沿って研磨し、表面に残った余分なとの粉を落とします。和信ペイントのガイドは、このあと必ず乾いたウエスで拭き取るよう求めています。アサヒペンの製品ページでも、よく乾かした後、必要に応じて#240程度のサンドペーパーで研磨し、表面の粉を拭き取る流れが示されています。
拭き取りを「必ず」と強調しているのは、表面に粉が残ったまま上塗りすると、塗料が木ではなく粉の層の上にのってしまうからです。和信ペイントのガイドも、表面にとの粉が多量に残っていると「上塗りした塗料が剥がれやすくなる傾向があります」と、埃の上に貼ったセロハンテープにたとえて説明しています。
乾いたウエスを使う理由もここにあります。濡れた布で拭くと、導管に入ったとの粉まで溶かして引き出してしまい、せっかくの目止めが弱くなります。表面の余分だけを取りたいので、乾いた布で軽くなでるように拭くのがコツです。
拭き終えたら、手のひらで表面をなでて確認しましょう。指先に粉がつくようなら、もう一度拭き取ります。この確認を省かないことが、上塗りの密着を安定させる近道です。
上塗り塗料と着色の順番は、使う製品の説明で決める
上塗りに使う塗料は、ニスをはじめとして、仕上げたい質感に合わせて選びます。ただし、との粉と各社の塗料の相性や、着色との順番については、塗料ごとに考え方が異なります。との粉側の資料だけで判断せず、上塗りに使う塗料の説明書や製品ページを必ず確認しましょう。
なぜ製品ごとの確認が必要かというと、塗料には水性・油性、浸透型・造膜型といった違いがあり、下地への吸い込み方や乾き方が変わるからです。目止めで穴を埋めたあとの木は、何もしていない木とは吸い込み方が違うので、塗料側の想定と合っているかを見ておく必要があります。
具体的に迷いやすいのが、着色剤で色をつけたいケースです。目止めの前に着色するのか、後にするのかで、導管に入る色の出方が変わります。前に触れたように、導管は色を吸い込みやすい場所なので、順番によって木目の見え方が変わる可能性があります。
確実なのは、使う予定の着色剤と上塗り塗料の説明書を読み、そのうえで端材に「研磨→目止め→着色・上塗り」を一通り試すことです。乾燥時間や塗り重ねの間隔も塗料ごとに決められているので、メーカーの表示どおりに進めましょう。
粉じんと買い方、使う前に知っておきたい注意点
乾いたとの粉は「鉱物粉じん」——労働局が示した考え方
との粉を扱ううえで見落とされがちなのが、乾いたあとの粉です。令和6年7月22日に新潟労働局労働基準部長名で出された通知では、桐たんすの表面に液体で溶かした砥の粉を塗って乾燥後に拭き取る作業などを行った元労働者について、じん肺管理区分決定の申請があったことを受け、事業場への周知が行われています。
通知は「砥の粉が乾燥しますと「鉱物粉じん」に該当することから、当該作業は、粉じん作業に該当し、防じんマスクを着用の上、作業をさせる義務が生じます。」と述べています。さらに、手持ち式や可搬式の動力工具で鉱物を仕上げる場合について「手持式又は可搬式動力工具を用いて岩石又は鉱物を裁断し、彫り、又は仕上げする場合は、防じんマスク(国家個別検定合格品)を着用させること。」としています。
この通知は桐たんす製造などの事業場向けで、家でのDIYを直接の対象にしたものではありません。ただ、乾いたとの粉は岩石の粉であり、吸い込まないように配慮すべき理由を示す公的な根拠になります。特に最終研磨や拭き取りでは粉が舞いやすく、電動サンダーを使えばなおさらです。
家でも、研磨や乾いた粉を扱う段階では防じんマスクを着け、粉が舞いにくいように手順を工夫しておきましょう。電動サンダーと粉じんの関係は、次の記事でも触れています。

アサヒペンのとのこ600gで、使う量の目安をつかむ
DIYで手に入りやすい製品の一つに、アサヒペンの「とのこ 600g」があります。メーカー公式の製品ページで仕様を確認すると、どれくらいの面積に使えるかの見当がつきます。
| 種類・用途 | 木部・木工品の目止め(メーカー公式の記載) |
| 内容量・色 | 600g/2色 |
| 標準施工量 | 6~9㎡(畳3.5~5.3枚分) |
| 特長 | 水に溶けやすい微粉末で、木目に入りやすい |
| 使い方のコツ・注意 | ハケかウエスで刷り込むように塗る。よく乾かした後、必要に応じて#240程度のサンドペーパーで研磨し表面の粉を拭き取る |
標準施工量の6~9㎡(畳3.5~5.3枚分)に幅がある理由は製品ページに書かれていませんが、木の種類や導管の大きさ、塗る厚みによって必要な量が変わるためと考えられます。導管の大きい木や、二度塗りをする場合は多めに見ておくと安心です。テーブルの天板や棚板程度なら、1袋で足りるかどうかを面積から見積もれます。詳しい仕様はアサヒペンの製品ページで確認できます。
成分や注意事項は、製品ページではなくSDSで確かめる
アサヒペンの製品ページには、成分や取り扱い上の注意事項の詳しい記載はありません。こうした情報を確かめたい場合は、メーカーが公開しているSDS(安全データシート)を確認するのが確実です。SDSには、成分や取り扱い時の注意、保管方法などがまとめられています。
製品ページとSDSで役割が分かれているのは、製品ページが「何に使えるか・どう使うか」を伝えるためのもので、SDSが「安全に扱うための情報」をまとめた資料だからです。との粉のように天然の岩石を原料にした材料でも、成分の詳しい内容は製品ごとに異なる可能性があるので、断定せずに一次資料で確認する姿勢が大切です。
買う前に知っておきたいのが、店頭での取り扱いです。アサヒペンの公式サイトには現在も掲載されていますが、量販店では色によって販売終了の表示が出ている場合があり、店頭の品ぞろえは店によって異なります。売り場に見当たらないときは、前に紹介した表記ゆれも含めて探してみましょう。
保証や取り扱いの詳細な問い合わせは、メーカー公式サイトの案内に従ってください。迷いやすい点は、次のQ&Aにまとめます。
まとめ|目止めは「埋める・乾かす・研ぐ・塗る」の4段で考える
との粉は、木の表面の小さな穴を埋めて、塗料が平らにのる土台をつくる材料です。目止めそのものは下地づくりで、仕上げはその後の上塗りが担います。まずは本番と同じ木の端材を1枚用意し、240番で研いで、との粉と水を1対1を目安に混ぜ、すり込み・乾燥・研磨・上塗りまでを一通り試してみてください。ひび割れや色の出方を先に確かめておけば、本番の天板や棚板を落ち着いて仕上げられます。乾いた粉を扱う研磨の段階では、防じんマスクを着けて粉を吸い込まないようにしましょう。
※製品の仕様や取り扱い状況は変わることがあります。最新情報は各メーカーの公式サイトでご確認ください。

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